寄生生物はしばしば自らの利益のために、宿主の行動を操作します。この行動操作は、自然界の捕食―被食関係を改変し、結果、大きなエネルギー流を駆動することが知られています。このような寄生者介在型のエネルギー流は、複数の寄生者種と宿主種によって維持されることが明らかになりつつありますが、多様な宿主―寄生者関係が、エネルギー流の季節性をどのように規定するのかは未解明でした。
朝倉日向子 理学研究科修士課程学生、佐藤拓哉 生態学研究センター准教授、岸田治 北海道大学准教授らの研究グループは、系統の異なるハリガネムシと陸生昆虫宿主の寄生関係が、エネルギー流に複数の季節的経路をもたらすことを示しました。本研究で明らかになった異なる宿主―寄生者関係が同所的に維持されることによる影響は、他の生態系や宿主―寄生者関係においても普遍的に見られると考えられ、寄生生物の役割の正しい理解に、宿主―寄生者関係の多様性を認識する必要があることを示しています。
本研究成果は、2024年7月17日に、国際学術誌「Biology letters」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1098/rsbl.2024.0065
【書誌情報】
Hinako Asakura, Ryo Futamura, Senri Moriyama, Satoko Iida, Koume Araki, Masato Ayumi, Shoji Kumikawa, Yuichi Matsuoka, Taro Takahashi, Jiro Uchida, Osamu Kishida, Takuya Sato (2024). Two distinct host-parasite associations mediate seasonal ecosystem linkages. Biology Letters, 20, 7, 20240065.