環境適応電源・デジタル変換半導体集積回路の開発に成功―22nmで実証、体内で自律動作するIoTの開発へ―

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 新津葵一 情報学研究科教授、劉昆洋 同助教、張瑞琳 同特定助教、北池弘明 同修士課程学生、田川宏紀 同修士課程学生らの研究グループは、涙液糖駆動が可能な0.9pWの消費電力、0.1Vの電源電圧で動作する環境適応型電源・デジタル変換半導体集積回路の開発に成功し、22nm(ナノメートル:10億分の1メートル)のCMOSプロセスで実証しました。

 低電力・低電源電圧動作を達成するために、電源確保対象とセンシングデータ取得対象が同一のシステムにおいて、入力信号となる入力電源電圧の高低に応じて動作させる要素回路ブロックを自律的に最適化し、低電力化に寄与する手法を開発しました。環境に存在するエサの量に応じて動作を自律的に最適化するカエルのように、環境適応することで低電力化を実現します。

 具体的には、異なるしきい値の電源電圧を有する複数の信号駆動回路(バッファ)を搭載し、クロック信号が与えられた際に動作したバッファ回路の数を数えることでデジタル化をする手法を提案しました。低入力電源電圧の際には少ない数のバッファが動作するため、消費電力を低減させることが可能となり、22nmの超低リーク電流CMOSプロセスにおいて提案回路の有効性を実証しました。

 現在、涙液糖駆動の単独動作可能持続血糖モニターコンタクトやデジタル錠剤、スマートステントなどへの展開を目指しています。

 本研究成果は、2024年6月16日から開催されているIEEE Symposium on VLSI Technology and Circuitsの技術論文の要約集「Digest of Technical Papers」に掲載されました。

文章を入れてください
本研究開発のイメージ図:提案回路の動作を、カエルの合唱に例えて表現している。歌声を発するのに必要なエサの量が異なるカエル達を複数設け(動作しきい値電源電圧の異なるバッファを複数設け)、環境中に存在するエサの量(環境中で得られる電源電圧)に応じて、指揮を受けた時に歌声を発するカエルの数(クロックを与えられた時に動作する回路の数)が変化することを活用してデジタル変換を行う。
研究者のコメント
「研究を支えてくださる関係者の皆様に御礼申し上げます。半導体集積回路は、社会の基盤として多くの応用へと展開されています。今後とも、半導体集積回路設計において基盤技術開発と応用開拓を並行して研究開発を進めてまいります。」
研究者情報
メディア掲載情報

日刊工業新聞(6月18日 25面)に掲載されました。

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