核融合プラズマの新たな乱流遷移を発見―核融合炉の革新的な運転シナリオの確立へ―

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 フュージョンエネルギーの実現には、磁場のカゴで高温のプラズマを保持し、核融合反応を起こす必要があります。ところが、プラズマ中に存在する不規則で微視的な揺らぎ(乱流)により、プラズマが磁場のカゴから流れ出てしまいます。そのため、乱流の物理特性を理解し、それを抑制することは重要な課題です。

 石澤明宏 エネルギー科学研究科教授、木下稔基 九州大学助教、田中謙治 核融合科学研究所教授らの研究グループは、大型ヘリカル装置(LHD)において、レーザーを用いた高精度計測により、特定の条件において乱流が抑制される現象を観測しました。さらに軽水素プラズマと重水素プラズマの比較実験およびスーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、乱流の抑制は乱流の種類が変化する際に起こることが明らかとなりました。本研究結果は、乱流抑制のための核融合炉の革新的な運転シナリオの確立や炉設計への応用が期待される成果です。

 本研究成果は、2024年6月7日に、国際学術誌「Physical Review Letters」に掲載されました。

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LHDにおける乱流計測
研究者のコメント

「理論的に予測されていた波的な乱流から渦的な乱流への遷移が実験で観測されて非常にうれしいです。核融合プラズマ実験装置における精密な揺動計測により今回の成果が得られました。このような精密観測によって、今後、実験室および宇宙におけるプラズマ乱流の理解が進むことを期待しております。」(石澤明宏)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.132.235101

【書誌情報】
Kinoshita, T. and Tanaka, K. and Ishizawa, A. and Sakai, H. and Nunami, M. and Ohtani, Y. and Yamada, H. and Sato, M. and Nakata, M. and Tokuzawa, T. and Yasuhara, R. and Takemura, Y. and Yamada, I. and Funaba, H. and Ida, K. and Yoshinuma, M. and Tsujimura, T. and Seki, R. and Ichiguchi, K. and Michael (2024). Turbulence Transition in Magnetically Confined Hydrogen and Deuterium Plasmas. Physical Review Letters, 132, 235101.