Sofia SAHAB 情報学研究科特定助教、Jawad HAQBEEN 同特定助教、Rafik HADFI 同特定准教授、伊藤孝行 同教授、Richard Eke IMADE 名古屋大学学生(研究当時)、大沼進 北海道大学教授、長谷川拓也 名古屋工業大学学生(研究当時)から成る研究グループは、会話型のAIエージェントを用いることで、対立状況にあるグループの偏見と不安を軽減できることを明らかにしました。実世界での対立状況として、アフガニスタンで歴史的に分断され対立し続けている民族グループを対象としました。さらに、会話型AIエージェントと、偏見と不安の軽減効果の因果関係を、ランダム化比較実験(RCT)を用いて明らかにしました。ここでは、オンライン議論支援システムD-Agreeを用い、議論をファシリテートする会話型AIエージェントを用いました。実験では、3つの民族出身の参加者を会話型AIエージェントがあるグループ(介入グループ)と、会話型AIエージェントのないグループ(対照グループ)に分け、効果を確かめました。介入グループの参加者は、対照グループの参加者よりも意見をより多く出し、より長い意見を述べ、外部グループへの偏見と不安がより大きく減少しました。本結果は、会話型AIエージェントに基づく電子的な接触が、歴史的に分断し対立したグループ間でさえ、偏見や不安を改善できることを示しています。
本研究結果は、2024年3月21日に、国際学術誌「Communications Psychology (Nature Portfolio)」にオンライン公開されました。
「我々は多様な人間のグループ間の相互作用に理解を深め、ポジティブな相互作用を促進することに深く関心を寄せています。本研究は、特に紛争の影響を受け分断が起きている地域において、偏見や不安の軽減に会話型AIエージェントが役立つ可能性を示しています。本研究が、社会における平和と理解を促進する可能性に、私たちは強い興味を持っています。現在世界中で起こっている社会の分断など、我々が直面しているのは極めて困難な課題です。本研究の示唆するものは、技術が隔たりを埋め、より包括的な世界を創造する力があることを再確認するものです。今後の研究でこれらの可能性をさらに探求することを楽しみにしています。」
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s44271-024-00070-z
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/287890
【書誌情報】
Sofia SAHAB, Jawad HAQBEEN, Rafik HADFI, Takayuki ITO, Richard Eke IMADE, Susumu OHNUMA, Takuya HASEGAWA (2024). E-contact Facilitated by Conversational Agents Reduces Interethnic Prejudice and Anxiety in Afghanistan. Communications Psychology, 2, 22.
日刊工業新聞(4月18日 29面)に掲載されました。