末次祥大 理学研究科助教、松田祐司 同教授、今村薫平 東京大学博士課程学生、水上雄太 同助教(現:東北大学准教授)、橋本顕一郎 同准教授、芝内孝禎 同教授、那須譲治 東北大学准教授らの研究グループは、東京工業大学、韓国科学技術院と共同で、環境ノイズに非常に強いトポロジカル量子コンピューターの実現の鍵となる「マヨラナ粒子」の存在を証明する決定的な証拠を得ました。
これまで、磁性絶縁体α-RuCl3において、半整数熱量子ホール効果が観測され、マヨラナ粒子が存在するという報告がなされていました。しかし、この熱ホール効果は試料ごとに異なる結果を示すことや、異なる解釈を提案するグループも現れたことから大きな論争となり、別の観点から決定的な証拠を得ることが最重要課題となっていました。
今回、磁場をある特定の方向に向けるとマヨラナ粒子固有の特別な状態が実現することを明らかにしました。これは、マヨラナ粒子の存在に関する決定的な証拠といえます。さらに、磁場中でのマヨラナ粒子は、非可換エニオンという新奇な粒子を形成し得ることが分かっています。この非可換エニオンは、トポロジカル量子コンピューターを実現するうえでのワイルドカードになると期待されている粒子です。本研究成果は、このα-RuCl3がトポロジカル量子コンピューターを実現する有力候補となり得ることを示すだけでなく、物質中における非可換エニオンの理解への大きな進展が期待されます。
本研究成果は、2024年3月13日に、国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1126/sciadv.adk3539
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/287384
【書誌情報】
Kumpei Imamura, Shota Suetsugu, Yuta Mizukami, Yusei Yoshida, Kenichiro Hashimoto, Kenichi Ohtsuka, Yuichi Kasahara, Nobuyuki Kurita, Hidekazu Tanaka, Pureum Noh, Joji Nasu, Eun-Gook Moon, Yuji Matsuda, Takasada Shibauchi (2024). Majorana-fermion origin of the planar thermal Hall effect in the Kitaev magnet α-RuCl₃. Science Advances, 10(11):eadk3539.