オミクロンXBB.1.5のウイルス学的特性の解明~新型コロナウイルスの生態の全容解明に貢献すると期待~

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※ 「詳しい研究内容について」(PDF)を一部修正しました。(2024年2月29日)

 高山和雄 iPS細胞研究所講師、出口清香 同博士課程学生、橋口隆生 医生物学研究所教授、矢島久乃 同修士課程学生、福原崇介 北海道大学教授らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、2022年10月ごろに出現したオミクロンXBB.1.5のウイルス学的特性を明らかにしました。

 XBB.1.5は、それ以前に流行していたXBB.1と比較して、スパイクタンパク質とORF8タンパク質にアミノ酸の点変異を持つことが分かっていました。しかし、なぜ二つのアミノ酸の違いで、XBB.1.5が流行するに至ったのかは不明でした。本研究では、このXBB.1.5について系統進化、スパイクタンパク質の構造およびウイルス学的解析を行うことで、多角的にその特性を解析しました。

 まず、オミクロンの系統進化学的解析を行ったところ、XBB.1.5で認めた二つの変異はORF8、スパイクの順に出現したことが分かりました。次に、直接の祖先であるXBB.1とXBB.1.5を用いて中和試験を実施したところ、同等の中和感受性を示すことが分かりました。クライオ電子顕微鏡を用いた解析ではXBB.1とXBB.1.5のスパイクタンパク質と新型コロナウイルスの感染受容体であるACE2との相互作用の違いは認めませんでした。さらに、合胞体形成活性、培養細胞およびオルガノイドでの増殖能もXBB.1とXBB.1.5との間で有意な差を認めませんでした。一方で、ハムスターモデルにおけるXBB.1.5の病原性はXBB.1よりも低いことが明らかとなりました。そこで、ウイルスの弱毒化のメカニズムを明らかにするために、オルガノイドにおけるMHCクラスI分子の発現を調べました。その結果、XBB.1.5はXBB.1と比較して、発現の低下が抑えられていないことが分かりました。それぞれの点変異を持つ組換えウイルスを作出し、病原性試験を行ったところ、ORF8の機能欠損による免疫抑制機構の低下がXBB.1.5の病原性に関与することが明らかになりました。

 本研究成果は、2024年2月8日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

文章を入れてください
XBB.1. 5の多角的なウイルス性状解析
研究者情報
研究者名
出口 清香
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-024-45274-3

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/287044

【書誌情報】
Tomokazu Tamura, Takashi Irie, Sayaka Deguchi, Hisano Yajima, Masumi Tsuda, Hesham Nasser, Keita Mizuma, Arnon Plianchaisuk, Saori Suzuki, Keiya Uriu, Mst Monira Begum, Ryo Shimizu, Michael Jonathan, Rigel Suzuki, Takashi Kondo, Hayato Ito, Akifumi Kamiyama, Kumiko Yoshimatsu, Maya Shofa, Rina Hashimoto, Yuki Anraku, Kanako Terakado Kimura, Shunsuke Kita, Jiei Sasaki, Kaori Sasaki-Tabata, Katsumi Maenaka, Naganori Nao, Lei Wang, Yoshitaka Oda, The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium, Terumasa Ikeda, Akatsuki Saito, Keita Matsuno, Jumpei Ito, Shinya Tanaka, Kei Sato, Takao Hashiguchi, Kazuo Takayama, Takasuke Fukuhara (2024). Virological characteristics of the SARS-CoV-2 Omicron XBB.1.5 variant. Nature Communications, 15:1176.