木内建太 基礎物理学研究所特任准教授(兼:ドイツ・マックスプランク重力物理学研究所(Max Planck Institute for Astrophysics)グループリーダー)は、柴田大 同教授(兼:同所長)、関口雄一郎 東邦大学教授らと共同で、スーパーコンピューターを使用し、連星中性子星合体の世界最高解像度の第一原理シミュレーションに成功しました。これにより、連星中性子星合体が引き起こす宇宙最大規模の爆発現象ショートガンマ線バーストはダイナモ機構と呼ばれるメカニズムによって駆動されることを明らかにしました。その発見以来、50年以上にわたって宇宙物理学の重要未解決問題とされてきたガンマ線バーストの駆動機構を解明する画期的な成果で、波及効果は宇宙物理にとどまらず、原子核物理、素粒子物理学にも及ぶと予想されます。
2017年、二つの中性子星からなる連星が合体し、重力波とガンマ線帯域で突発的に輝く天体(ショートガンマ線バースト)が世界で初めて同時観測されましたが、どのような物理機構でショートガンマ線バーストが駆動されたのかを明らかにするには精緻なシミュレーションが必要です。
本研究成果は、2024年2月15日に、国際学術誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されました。
「2009年頃より連星中性子星合体の研究に携わり始めました。それ以来、重力波の直接観測や連星中性子星合体の初観測など観測的に目まぐるしい発展がありました。一方、スーパーコンピューターも京を経て富岳へと目覚ましい発展を遂げています。重力波を含んだマルチメッセンジャー天文学が急速な発展を遂げる時代に、スーパーコンピューターを駆使してショートガンマ線バーストの大きな謎に挑戦できたことは大変興奮するとともに誇らしいことです。宇宙では、地上では起こり得ない興味深い現象が沢山あります。今後も挑戦的な研究課題に取り組んでいきたいと思います。」(木内建太)
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41550-024-02194-y
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/287444
【書誌情報】
Kenta Kiuchi, Alexis Reboul-Salze, Masaru Shibata, Yuichiro Sekiguchi (2024). A large-scale magnetic field produced by a solar-like dynamo in binary neutron star mergers. Nature Astronomy, 8(3), 298–307.