堂園昌伯 理学研究科助教、今井伸明 東京大学准教授、大津秀暁 理化学研究所チームリーダー、炭竃聡之 同チームリーダー、鈴木大介 同研究員、Jongwon Hwang 韓国・基礎科学研究院(Institute for Basic Science)研究員らの研究グループは、長寿命核分裂片の一つである放射性同位体79Se中性子捕獲断面積を実験的に評価しました。
本研究では理化学研究所仁科加速器科学研究センターのRIビームファクトリーで供給される、光速の70%の速度を持つ79Se(寿命32万年)イオンビームを東京大学原子核科学研究センターが開発、運用する重イオンビーム減速・収束装置OEDOを用いて、光速の20%まで減速後に、重陽子に照射、1中性子移行反応により80Seの高励起状態を生成しました。さらに、SHARAQ磁気分析器を用いて直接80Seを観測することで、80Seの高励起状態から中性子や陽子を放出せず、光放出で80Seの基底状態になる確率を決定しました。この高励起状態の生き残り確率から79Seの中性子捕獲反応率が決定できます。変換後の80Seを直接観測することで反応率を決定するという先行研究にはない新規性があり、この研究成果は今後、長寿命核分裂片といった放射性廃棄物の消滅処理の基礎研究や、宇宙での元素の起源天体の解明に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2024年2月13日に、国際学術誌「Physics Letters B」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.physletb.2024.138470
【書誌情報】
N. Imai, M. Dozono, S. Michimasa, T. Sumikama, S. Ota, S. Hayakawa, J.W. Hwang, K. Iribe, C. Iwamoto, S. Kawase, K. Kawata, N. Kitamura, S. Masuoka, K. Nakano, P. Schrock, D. Suzuki, R. Tsunoda, K. Wimmer, D.S. Ahn, O. Beliuskina, N. Chiga, N. Fukuda, E. Ideguchi, K. Kusaka, H. Miki, H. Miyatake, D. Nagae, S. Ohmika, M. Ohtake, H.J. Ong, H. Otsu, H. Sakurai, H. Shimizu, Y. Shimizu, X. Sun, H. Suzuki, M. Takaki, H. Takeda, S. Takeuchi, T. Teranishi, Y. Watanabe, Y.X. Watanabe, K. Yako, H. Yamada, H. Yamaguchi, L. Yang, R. Yanagihara, Y. Yanagisawa, K. Yoshida, S. Shimoura (2024). Neutron capture reaction cross-section of 79Se through the 79Se(d,p) reaction in inverse kinematics. Physics Letters B, 850:138470.