岩本昌倫 基礎物理学研究所特任助教、松本洋介 千葉大学准教授、天野孝伸 東京大学准教授、星野真弘 同教授、松清修一 九州大学教授らの研究グループは、スーパーコンピュータ「富岳」を使い、高速電波バーストの再現に成功しました。
高速電波バーストとは、突如としてごく短時間だけ電波で輝く宇宙最大の電波爆発です。その起源は、マグネターと呼ばれる非常に強い磁場を持った中性子星の周辺に形成される衝撃波であると信じられていますが、これまでは理論的裏付けがありませんでした。今回の「富岳」による衝撃波の超大規模シミュレーションの結果、シミュレーション内の電波はこれまでの観測と矛盾がなく、高速電波バーストを正しく再現できていることを初めて実証しました。
高速電波バーストの電波信号には通過してきた宇宙の情報が刻まれているため、宇宙の進化や構造を探る道具として利用できると考えられています。そのためには高速電波バーストがどこでどのようにして発生しているかを理解することが重要ですが、本研究はその解明に大きく迫り、宇宙論といった別分野にも波及効果をもたらすことが期待されます。
本研究成果は、2024年1月16日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。
「本研究は2020年ごろから本格的にはじまりましたが、『富岳』は始動直後だったためさまざまな技術的トラブルに見舞われ、さらにはコロナウイルス流行による研究環境の変化も相まって、完成に想定よりも遥かに時間がかかってしまいました。こういった困難もあって、研究が無事完成し論文として受理されたときの喜びはひとしおでした。」(岩本昌倫)
【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.132.035201
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286877
【書誌情報】
Masanori Iwamoto, Yosuke Matsumoto, Takanobu Amano, Shuichi Matsukiyo, Masahiro Hoshino (2024). Linearly Polarized Coherent Emission from Relativistic Magnetized Ion-Electron Shocks. Physical Review Letters, 132(3):035201.