反応ネットワークの構造変化による摂動応答変化を解析する

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 細胞内で働く数千の化学反応はつながって複雑な化学反応ネットワークを形作っています。このネットワークから生じる物質の量の時間変化が、細胞の様々な機能を実現していると考えられます。異なる生物種の間で反応ネットワークが異なることや、がん化によりネットワークが変化することが知られている一方で、それらがもたらす反応システムの振る舞いの変化について、一般的な理解は存在していませんでした。

 菱田温規 理学研究科博士課程学生と、望月敦史 医生物学研究所教授、岡田崇 同准教授らは、ネットワーク構造から振る舞いを決定する数理理論(構造感度解析)を用いて、ネットワークの変化がもたらす、反応システムの制御様式の変化を決定する手法を開発しました。この手法により、細胞内のエネルギー代謝を担うクエン酸回路が、正常な細胞では他から独立して制御されているのに対し、一部のがん細胞ではそうなっていない可能性を示しました。また細胞外シグナルを受け取って細胞増殖を引き起こすMAPK経路において、タンパク質の分解が促進されると、シグナル伝達が阻害されることを発見しました。今回の成果により、ネットワーク構造と細胞の振る舞いとの関係について、理解が進むことが期待されます。

 本研究成果は、2023年12月29日に、国際学術誌「PNAS Nexus」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
がん進行に伴うネットワーク構造変化が制御のモジュール構造を変化させる
研究者のコメント

「細胞の持つ反応ネットワークの構造は昔から研究されており、高校の教科書にも一部記載されているものもありますが、それらのネットワークの振る舞いを数学的に記述する試みは未だ発展の余地があります。今回の結果を用いることで、既知のネットワーク構造が細胞にとってどのような面で有利であるかが理論的に明らかとなっていくことを期待しています。」(菱田温規)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgad441

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286867

【書誌情報】
Atsuki Hishida, Takashi Okada, Atsushi Mochizuki (2024). Patterns of change in regulatory modules of chemical reaction systems induced by network modification. PNAS Nexus, 3(1):pgad441.