銭廣十三 理学研究科准教授、金田佳子 同准教授、上坂友洋 理化学研究所部長、大津秀暁 同チームリーダー、ペンジー・リー 中国科学院研究員、ディディエ・ボーメル パリ・サクレー大学上級研究員、ジェニー・リー 香港大学教授、緒方一介 九州大学教授らの国際共同研究グループは、理化学研究所の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」の多種粒子測定装置「SAMURAIスペクトロメータ」を用いて、不安定なベリリウム−10(10Be、原子番号4)原子核の基底状態では、アルファ粒子二つと中性子二つが窒素分子のように結合していることを発見しました。
本研究成果は、元素合成過程の理解に大きな影響を与える、原子核内でのアルファ粒子生成機構解明に貢献すると期待されます。
今回、国際共同研究グループは、RIBFで生成された10Be原子核ビームに対し、ノックアウト反応という手法を用いてアルファ粒子を取り出すと同時に、取り出した後に残る原子核をSAMURAIスペクトロメータによって同定しました。この結果を最先端の核構造理論および核反応理論と比較することで、10Be原子核が、二つのアルファ粒子と分子軌道を占有する中性子から成る分子構造を持つことを明らかにしました。
本研究成果は、2023年11月21日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。
10Be原子核の分子構造。アルファ粒子の周りの分子軌道を中性子(青丸)が運動している
【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.131.212501
【書誌情報】
P. J. Li, D. Beaumel, J. Lee, M. Assié, S. Chen, S. Franchoo, J. Gibelin, F. Hammache, T. Harada, Y. Kanada-En'yo, Y. Kubota, S. Leblond, P. F. Liang, T. Lokotko, M. Lyu, F. M. Marqués, Y. Matsuda, K. Ogata, H. Otsu, E. Rindel, L. Stuhl, D. Suzuki, Y. Togano, T. Tomai, X. X. Xu, K. Yoshida, J. Zenihiro, N. L. Achouri, T. Aumann, H. Baba, G. Cardella, S. Ceruti, A. I. Stefanescu, A. Corsi, A. Frotscher, J. Gao, A. Gillibert, K. Inaba, T. Isobe, T. Kawabata, N. Kitamura, T. Kobayashi, Y. Kondo, A. Kurihara, H. N. Liu, H. Miki, T. Nakamura, A. Obertelli, N. A. Orr, V. Panin, M. Sasano, T. Shimada, Y. L. Sun, J. Tanaka, L. Trache, D. Tudor, T. Uesaka, H. Wang, H. Yamada, Z. H. Yang, M. Yasuda (2023). Validation of the 10Be Ground-State Molecular Structure Using 10Be(p,pα)6He Triple Differential Reaction Cross-Section Measurements. Physical Review Letters, 131(21):212501.