河口浩介 医学研究科助教、Wei Li 同博士課程学生らの研究グループは、乳がん細胞の老化と治療に関連する新たな研究結果を発表しました。
多くの抗がん薬はがん細胞を老化させる効果がありますが、老化した細胞の細胞内pHの調整機構はまだよくわかっていません。本研究では、乳がんの主要な治療薬である、ドキソルビシンとアベマシクリブという薬剤を使用して乳がん細胞を老化させました。その結果、ATP6AP2というメッセンジャーRNAの減少が、リソソームの機能不全と細胞内の異常なpHレベルを引き起こすことが確認されました。このことにより、老化がん細胞の免疫プロファイルの変化と関連している可能性が示唆されました。この発見は、抗がん治療への応答としての老化のメカニズムを理解するための新しい知見となります。これにより、乳がん治療の新たな方法やアプローチの開発に寄与する可能性が期待されます。
本研究成果は、2023年11月22日に、国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s42003-023-05433-6
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286180
【書誌情報】
Wei Li, Kosuke Kawaguchi, Sunao Tanaka, Chenfeng He, Yurina Maeshima, Eiji Suzuki, Masakazu Toi (2023). Cellular senescence triggers intracellular acidification and lysosomal pH alkalinized via ATP6AP2 attenuation in breast cancer cells. Communications Biology, 6:1147.