温度による酵素の構造変化を分子動画撮影 様々な生体高分子のダイナミクスを決定する新たな方法論

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 生命維持に必須であるタンパク質は巧みに構造変化を起こすことから、タンパク質の複雑な機能と深い相関を持つ“動き”に興味が持たれてきました。最近、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いて、タンパク質の動きを原子レベルで動画として可視化する方法が確立されましたが、この方法が使えるのは光で反応するタンパク質に限られていました。

 今回、岩田想 医学研究科教授、南後恵理子 東北大学教授(兼:理化学研究所チームリーダー)、大和田成起 高輝度光科学研究センター主幹研究員、久保稔 兵庫県立大学教授、およびカリフォルニア大学の共同研究グループは、近赤外線レーザーによって温度を急激に上昇させる方法を組み合わせた、新たな分子動画解析法を開発しました。これにより熱によって引き起こされる酵素内部の構造変化を捉えることに初めて成功しました。

 本研究成果は、2023年9月18日に、国際学術誌「Nature Chemistry」に掲載されました。

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リゾチーム結晶(阻害剤無)に近赤外線レーザーを照射した後の構造変化。アミノ酸残基の構造モデルを線で表し、炭素原子は灰色、酸素原子は赤色、窒素原子は青色で表記している。黄色と薄青色のマップは照射後と照射前の電子密度の変化を表し、黄色は負、薄青色は正の電子密度図を意味する。モデルの上に負の電子密度がある場合は、そのモデル上の原子が移動したことを示し、正の電子密度がある部分は新たに原子や分子が存在することを意味する。
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41557-023-01329-4

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/285996

【書誌情報】
Alexander M. Wolff, Eriko Nango, Iris D. Young, Aaron S. Brewster, Minoru Kubo, Takashi Nomura, Michihiro Sugahara, Shigeki Owada, Benjamin A. Barad, Kazutaka Ito, Asmit Bhowmick, Sergio Carbajo, Tomoya Hino, James M. Holton, Dohyun Im, Lee J. O’Riordan, Tomoyuki Tanaka, Rie Tanaka, Raymond G. Sierra, Fumiaki Yumoto, Kensuke Tono, So Iwata, Nicholas K. Sauter, James S. Fraser & Michael C. Thompson (2023). Mapping protein dynamics at high spatial resolution with temperature-jump X-ray crystallography. Nature Chemistry, 15(11), 1549-1558.