木内建太 基礎物理学研究所特任准教授(兼:ドイツ・マックスプランク重力物理学研究所グループリーダー)、柴田大 同教授(兼:同所長)、林航大 同博士課程学生(現:同研究員)、関口雄一郎 東邦大学教授らのグループは、スーパーコンピューター「富岳」を使い、連星中性子星の合体に対する世界最長(合体後1秒間、既存の10倍)の一般相対性論シミュレーションに成功しました。
この結果により合体過程で放射される重力波や電磁波の特徴について高精度かつ統一的な理解が得られたことは、合体で実際に何が起こったかを詳細に理解する重要な一歩となります。
2017年に、2つの中性子星からなる連星の合体によって重力波および電波、近赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線に渡る電磁波が世界で初めて観測されました。精緻なシミュレーションは、こうした様々な「メッセンジャー」の情報をもとに連星中性子星合体に多角的に迫るマルチメッセンジャー天文学で重要な役割を果たすだけでなく、天文学や原子核物理、素粒子物理学など別分野への波及も見込まれます。
本研究成果は、2023年7月7日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。
「本研究は2019年頃に本格的に開始しましたが、パンデミックによるオフィスへ行けない時期を含め、たくさんの困難を乗り越えた末にようやく完成に至りました。宇宙で起こる現象は日常生活から遠く離れたものですが、それを基礎物理学で解き明かすことは人類の知の地平線を広げることにつながると信じています。今回の研究を通して、知の地平線を広げることに少しでも寄与できたであろうことは研究者として至上の喜びを感じます。」(木内建太)
【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.131.011401
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/284039
【書誌情報】
Kenta Kiuchi, Sho Fujibayashi, Kota Hayashi, Koutarou Kyutoku, Yuichiro Sekiguchi, Masaru Shibata (2023). Self-Consistent Picture of the Mass Ejection from a One Second Long Binary Neutron Star Merger Leaving a Short-Lived Remnant in a General-Relativistic Neutrino-Radiation Magnetohydrodynamic Simulation. Physical Review Letters, 131(1):011401.