環境DNAによる全国湖沼の魚類モニタリング:1Lの採水によって40種を超える魚種を検出

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 近年、国や地方自治体による広域的な湖沼魚類調査は、近年日本を含め、世界各国で減少しています。日本においても、従来の調査手法に変わる広域的な魚類モニタリングのための調査手法の開発が急務となっています。そこで、近年では水などの環境中からDNAを取り出して、生物の分布を把握する環境DNA手法が応用されつつあります。

 土居秀幸 情報学研究科教授、松岡俊将 フィールド科学教育研究センター講師、松崎慎一郎 国立環境研究所室長、パシフィックコンサルタンツ株式会社の池田幸資氏、真木伸隆氏、渡部健氏、株式会社PCERの山添寛治氏をはじめとする研究グループでは、環境DNA調査手法を用いて、全国の18湖沼における魚類多様性をどの程度把握できるかを検討しました。その結果、1湖沼当たり6箇所の採水(合計1L)によって、最大40種を超える魚種を捉えることができました。さらに魚の生息場所や隠れやすい体型などがそれぞれの種の環境DNAの検出に影響を与えることがわかりました。このことから、環境DNA調査により湖沼における魚類生息調査を全国広範囲において簡便に行える可能性があり、またそれらの検出結果については、従来との調査結果との違いの検証が必要であることが明らかとなりました。

 本研究成果は、2023年6月1日に、国際学術誌「Freshwater Biology」にオンライン掲載されました。

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環境DNA調査を行なった湖と採水風景
研究者のコメント

「全国的な湖沼の調査は、調査の停止などでその頻度が減少しているが、環境DNA手法を利用することで簡便にデータを取得できるようになり、継続調査も可能になると考えられます。その環境DNAからのデータを活かして、今後のネイチャーポジティブなど生物多様性を保全する社会実現のためのモニタリングが継続されればと考えています。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1111/fwb.14107

【書誌情報】
Hideyuki Doi, Shunsuke Matsuoka, Shin-ichiro S. Matsuzaki, Mariko Nagano, Hirotoshi Sato, Hiroki Yamanaka, Saeko Matsuhashi, Satoshi Yamamoto, Toshifumi Minamoto, Hitoshi Araki, Kousuke Ikeda, Atsuko Kato, Kouichi Kumei, Nobutaka Maki, Takashi Mitsuzuka, Teruhiko Takahara, Kimihito Toki, Natsuki Ueda, Takeshi Watanabe, Kanji Yamazoe, Masaki Miya (2023). Species traits and ecosystem characteristics affect species detection by eDNA metabarcoding in lake fish communities. Freshwater Biology, 68(8), 1346-1358.