井上峻 理学研究科修士課程学生、前原裕之 国立天文台助教らの研究グループは、京都大学3.8m「せいめい」望遠鏡を用いてりょうけん座RS型変光星V1355 Orionisのモニタ観測を実施し、巨大爆発現象「スーパーフレア」とそれに伴う超高速プロミネンス噴出を検出することに成功しました。
太陽・恒星フレアはプロミネンスと呼ばれる温度約一万度のプラズマの噴出現象を伴うことがあります。噴出したプロミネンスの速度が十分に大きい場合、そのプロミネンスは星の重力を振り払い、星の外にまで飛び出す質量噴出現象となることが太陽では確認されてきました。太陽以外の恒星でもフレアに伴ってプロミネンス噴出が確認された例はこれまでにもありましたが、そのプロミネンスの速度が星の重力を振り払えるほど大きかった例はほぼ皆無でした。本研究チームが今回発見したプロミネンスは約1600 km/sという極めて大きい速度で噴出しており、この星の重力を振り払うのに必要な最低速度である350 km/sを大きく超過していました。さらに、今回発見されたプロミネンスが太陽での最大級のプロミネンス噴出の100倍以上の質量を持っており、観測史上最大の重さのプロミネンスであることもわかりました。恒星の活動が周囲の惑星環境へと影響を与える「宇宙天気現象」の最極端なケースが今回捉えられたこととなります。
本研究成果は、2023年4月28日に、国際学術誌「The Astrophysical Journal」にオンライン掲載されました。
「自分のように研究業界に入ってまだ日の浅い学生であっても、間が良ければ今回のような極めて珍しい現象の発見を成し得るという点が、自然科学全般の中で突発的現象を研究することの醍醐味だと思います。今後はX線や電波などを加えた、より多数の望遠鏡での同時観測により、恒星におけるスーパーフレアとプロミネンス噴出の多波長同時検出に挑戦したいと考えています。」(井上峻)
【DOI】
https://doi.org/10.3847/1538-4357/acb7e8
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/281948
【書誌情報】
Shun Inoue, Hiroyuki Maehara, Yuta Notsu, Kosuke Namekata, Satoshi Honda, Keiichi Namizaki, Daisaku Nogami, Kazunari Shibata (2023). Detection of a High-velocity Prominence Eruption Leading to a CME Associated with a Superflare on the RS CVn-type Star V1355 Orionis. The Astrophysical Journal, 948(1):9.
京都新聞(4月28日 25面)、朝日新聞(4月28日夕刊 8面)、日本経済新聞(4月30日 26面)および毎日新聞(5月2日 17面)に掲載されました。