島村達郎 医学研究科特定准教授、野村紀通 同准教授、岩田想 同教授らの研究グループは、山下敦子 岡山大学教授、岡崎圭一 自然科学研究機構准教授、平井照久 理化学研究所チームリーダー(研究当時)らの研究グループと共同して、尿路結石形成に関わるシュウ酸分解菌が腸内からシュウ酸を吸収するときに利用するシュウ酸輸送体の立体構造を、SPring-8を用いて解明しました。
尿路結石症は、3大激痛の1つとも言われ、日々の食事でホウレンソウなどの食品から摂取したシュウ酸が、尿路でカルシウムなどと結晶化して結石を生じることで起こります。腸内細菌の1種であるシュウ酸分解菌は、腸内のシュウ酸を吸収・分解することで、この結石形成リスクを下げています。本研究グループは、シュウ酸を分解菌内へ吸収する役目を担うシュウ酸輸送体の立体構造を解明し、この分子が、シュウ酸に似た他の栄養素とシュウ酸を厳密に見分け、シュウ酸だけを結合しその構造を変化させることで、効率よく菌内に運ぶ仕組みを明らかにしました。
尿路結石症を防ぐ方法の1つとして、シュウ酸分解菌の治療応用の可能性が検討されています。本研究で得られた知見は、同菌に着目した治療法開発の基盤情報となることが期待できます。
本研究成果は、2023年4月3日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-023-36883-5
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/281556
【書誌情報】
Titouan Jaunet-Lahary, Tatsuro Shimamura, Masahiro Hayashi, Norimichi Nomura, Kouta Hirasawa, Tetsuya Shimizu, Masao Yamashita, Naotaka Tsutsumi, Yuta Suehiro, Keiichi Kojima, Yuki Sudo, Takashi Tamura, Hiroko Iwanari, Takao Hamakubo, So Iwata, Kei-ichi Okazaki, Teruhisa Hirai, Atsuko Yamashita (2023). Structure and mechanism of oxalate transporter OxlT in an oxalate-degrading bacterium in the gut microbiota. Nature Communications, 14:1730.