新たな発光材料としての発光ラジカルが、主に有機EL素子への応用分野で注目されています。一般に、ラジカルは発光を示しません。しかし、ある種のラジカルは発光することが知られています。
佐藤徹 福井謙一記念研究センター教授、アルブレヒト建 九州大学准教授、RuiXiaotian 同博士課程学生、大田航 株式会社MOLFEX研究員、細貝拓也 産業技術総合研究所主任研究員、中山泰生 東京理科大学准教授、Andrew P. Monkman 英国ダラム大学教授らの研究グループは、発光ラジカルの1つとして知られているTTMラジカルに対して、樹状高分子(デンドリマー)を結合させることで、TTMラジカルの発光効率を2%から63%にまで向上させ、赤色発光させることに成功しました。また、結合するデンドリマーが大きいほど高い発光効率を示すことがわかりました。デンドリマーを結合した発光ラジカルはこれまで知られていません。本研究は、高効率発光ラジカルの新しい設計方法を提案します。さらに、量子化学計算により、発光効率と波長がデンドリマーの大きさに伴って、それぞれ上昇することと短くなることの原因も明らかにしました。
発光ラジカルは、特に有機ELデバイスにおける第4の発光材料として注目を集めており、今後は高効率な有機デバイスへの応用が期待されます。
本研究成果は、2023年3月23日に、「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1002/anie.202302550
【書誌事項】
Rui Xiaotian, Wataru Ota, Tohru Sato, Minori Furukori, Yasuo Nakayama, Takuya Hosokai, Eri Hisamura, Kazuhiro Nakamura, Kenshiro Matsuda, Kohei Nakao, Andrew Monkman, Ken Albrecht (2023). Carbazole-Dendronized Luminescent Radicals. Angewandte Chemie International Edition, 62(28):e202302550.