深井周也 理学研究科教授、山形敦史 理化学研究所上級研究員、白水美香子 同チームリーダー、村田佳子 生物有機科学研究所特任研究員、難波康祐 徳島大学教授、寺田透准 東京大学教授らの共同研究グループは、イネ科植物が土壌中のムギネ酸鉄を吸収する機構を、トランスポーターの立体構造解析に基づいて解明しました。
本研究成果は、全陸地の約3分の1を占めるアルカリ性不良土壌の改善に向けた、ムギネ酸やその類縁体を用いた次世代肥料の開発に貢献すると期待できます。
植物は成長に必要な鉄を根から吸収しますが、アルカリ性不良土壌では鉄は水に溶けにくい三価鉄として存在するため、鉄の吸収が著しく阻害されます。一方、イネやムギは根からムギネ酸と呼ばれるキレート剤を分泌し、これが三価鉄と結び付いて水溶性となったムギネ酸鉄を吸収します。ムギネ酸鉄の吸収は根の細胞膜にあるYellow stripe1(YS1)と呼ばれるトランスポーターが担いますが、ムギネ酸鉄を運搬する仕組みはこれまで分かっていませんでした。
今回、共同研究グループはクライオ電子顕微鏡を用いて、YS1とムギネ酸鉄の複合体や、YS1とムギネ酸類縁体・鉄イオンの複合体の立体構造を解析しました。さらに、分子動力学シミュレーションにより、YS1がムギネ酸鉄を認識して結合し、根の内側へと輸送する機構の一端を明らかにしました。
本研究成果は、2022年11月23日に、オンライン科学雑誌「Nature communications」に掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-022-34930-1
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/277748
【書誌情報】
Atsushi Yamagata, Yoshiko Murata, Kosuke Namba, Tohru Terada, Shuya Fukai, Mikako Shirouzu (2022). Uptake mechanism of iron-phytosiderophore from the soil based on the structure of yellow stripe transporter. Nature Communications, 13:7180.