出口清香 iPS細胞研究所大学院生、橋口隆生 医生物学研究所教授、高山和雄 iPS細胞研究所講師、佐藤佳 東京大学教授らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」は、新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」のひとつである「オミクロンBA.2.75株(通称ケンタウロス)」のウイルス学的特徴を、流行動態、免疫抵抗性、および実験動物への病原性等の観点から明らかにしました。
まず、統計モデリング解析により、オミクロンBA.2.75株の実効再生産数は、オミクロンBA.2株に比べて1.34倍高いことを見出しました。また、オミクロンBA.2.75株の抗原性が、オミクロンBA.2株やオミクロンBA.5株とは異なることを明らかにしました。さらに、オミクロンBA.2.75株は感染受容体ACE2と既存変異株より強く結合することを実験的、構造学的に示しました。オミクロンBA.2.75株スパイクタンパク質による合胞体形成活性は、オミクロンBA.2株に比べて有意に高いことを明らかにしました。そして、オミクロンBA.2.75株は、オミクロンBA.2株に比べてハムスターにおける病原性が高いことを突き止めました。
本研究成果は、2022年10月9日に、科学雑誌「Cell Host & Microbe」オンライン版で公開されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.chom.2022.10.003
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/277087
【書誌情報】
Akatsuki Saito, Tomokazu Tamura, Jiri Zahradnik, Sayaka Deguchi, Koshiro Tabata, Yuki Anraku, Izumi Kimura, Jumpei Ito, Daichi Yamasoba, Hesham Nasser, Mako Toyoda, Kayoko Nagata, Keiya Uriu, Yusuke Kosugi, Shigeru Fujita, Maya Shofa, M.S.T. Monira Begum, Ryo Shimizu, Yoshitaka Oda, Rigel Suzuki, Hayato Ito, Naganori Nao, Lei Wang, Masumi Tsuda, Kumiko Yoshimatsu, Jin Kuramochi, Shunsuke Kita, Kaori Sasaki-Tabata, Hideo Fukuhara, Katsumi Maenaka, Yuki Yamamoto, Tetsuharu Nagamoto, Hiroyuki Asakura, Mami Nagashima, Kenji Sadamasu, Kazuhisa Yoshimura, Takamasa Ueno, Gideon Schreiber, Akifumi Takaori-Kondo, The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium, Kotaro Shirakawa, Hirofumi Sawa, Takashi Irie, Takao Hashiguchi, Kazuo Takayama, Keita Matsuno, Shinya Tanaka, Terumasa Ikeda, Takasuke Fukuhara, Kei Sato (2022). Virological characteristics of the SARS-CoV-2 Omicron BA.2.75 variant. Cell Host and Microbe, 30(11), 1540-1555:e15.