ホログラフィーによる宇宙の始まりの探索―新手法による初期宇宙の揺らぎの相関の計算―

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 疋田泰章 基礎物理学研究所特定准教授、陳恒榆 国立台湾大学教授の国際共同研究グループは、3次元重力を用いたホログラフィーを開発し、その手法による初期宇宙の密度揺らぎの相関の計算に世界で初めて成功しました。

 初期宇宙の研究は、宇宙創成のメカニズムの理解に必須です。また、地球上の実験施設では不可能な超高温状態が実現され、その状態の理解は宇宙の構成要素の解明に非常に有用です。ただし、解析が困難であることで有名な、量子重力の効果が強く効いてきます。近年では、量子重力の記述法としてホログラフィーが開発されていますが、初期宇宙に対しては理解があまり進んでいないのが現状です。本研究では、最近の提案をより精密にすることで、ホログラフィーを用いた初期宇宙の密度揺らぎの相関の計算に成功しました。今は簡単化した模型を解析している段階ですが、将来的には現実の宇宙における研究に幅広く応用できると考えています。

 本研究成果は、2022年8月3日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。

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ホログラフィーを利用した低次元の物質場の理論による、初期宇宙における密度揺らぎの相関の計算の概念図
初期宇宙の密度揺らぎの相関は、宇宙創成のメカニズムの理解や、宇宙の構成物質の解明に非常に重要である。本研究では、初期宇宙における量子重力により直接解析するのではなく、ホログラフィーにより低次元の物質場の理論に帰着させて計算を遂行した。

研究者のコメント

「量子重力を含む世の中の全ての現象を記述する理論として、超弦理論が有力候補として挙げられています。超弦理論は、点粒子のかわりにひもを構成要素とする、非常にエキゾチックな理論です。ただし、超弦理論特有な効果は超高温状態でしか現れず、実験的に検証するのが非常に困難なのが現状です。初期宇宙では実験室では不可能な超高温状態が実現でき、超弦理論特有な現象が捕まえられると期待されています。今回の初期宇宙の理論的な研究成果を、超弦理論の検証にもつなげていきたいと考えています。」(疋田泰章)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.129.061601

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/275823

【書誌情報】
Heng-Yu Chen, Yasuaki Hikida (2022). Three-Dimensional de Sitter Holography and Bulk Correlators at Late Time. Physical Review Letters, 129(6):061601.