光でイオンを輸送する膜タンパク質の巧妙な仕組み -XFELが捉えた光駆動型イオンポンプロドプシンの構造変化-

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 岩田想 医学研究科教授(理化学研究所グループディレクター)、白水美香子 理化学研究所チームリーダー、保坂俊彰 同技師、南後恵理子 同チームリーダー、久保稔 兵庫県立大学教授、登野健介 高輝度光科学研究センター主席研究員、濡木理 東京大学教授、吉澤晋 同准教授らの研究グループは、太陽光などの光を受けて塩化物イオン(Cl-)を細胞内に輸送する海洋細菌由来の「光駆動型イオンポンプロドプシン」の構造変化を、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いた高解像度の構造解析により解明しました。

 本研究成果は、光駆動型イオンポンプロドプシンのイオン輸送の仕組みを理解する上で重要な知見であり、光を使って神経細胞機能などを操作する光遺伝学(オプトジェネティクス)のさらなる改良への応用が期待できます。

 海洋細菌Nonlabens marinusが持つ光駆動型イオンポンプロドプシンNM-R3は、細胞内部に向かって塩化物イオンを輸送する機能を持ちます。

 今回、共同研究グループは「SACLA」を用いた「時分割結晶構造解析」により、光照射に伴うNM-R3の構造変化を詳細に捉えることに成功しました。この結果からNM-R3が塩化物イオンを輸送するメカニズムと輸送経路を明らかにするとともに、イオンの逆流や過流入を防ぐ巧妙な仕掛けがあることを見いだしました。

 本研究成果は、2022年2月23日に、国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」オンライン版に掲載されました。

光駆動型イオンポンプロドプシンNM-R3の立体構造(青丸は輸送中の塩化物イオン)
光駆動型イオンポンプロドプシンNM-R3の立体構造(青丸は輸送中の塩化物イオン)
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1073/pnas.2117433119

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/268241

Toshiaki Hosaka, Takashi Nomura, Minoru Kubo, Takanori Nakane, Luo Fangjia, Shun-ichi Sekine, Takuhiro Ito, Kazutaka Murayama, Kentaro Ihara, Haruhiko Ehara, Kazuhiro Kashiwagi, Kazushige Katsura, Ryogo Akasaka, Tamao Hisano, Tomoyuki Tanaka, Rie Tanaka, Toshi Arima, Ayumi Yamashita, Michihiro Sugahara, Hisashi Naitow, Yoshinori Matsuura, Susumu Yoshizawa, Kensuke Tono, Shigeki Owada, Osamu Nureki, Tomomi Kimura-Someya, So Iwata, Eriko Nango, Mikako Shirouzu (2022). Conformational alterations in unidirectional ion transport of a light-driven chloride pump revealed using X-ray free electron lasers. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(9):e2117433119.