泳ぐ微生物が海まで流されない理由 -SDGsに欠かせない小さな生物たちの振る舞いを解明-

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 市川正敏 理学研究科講師は、大村拓也 バーゼル大学Biozentrum博士、西上幸範 北海道大学助教、石川拓司 東北大学教授、野中茂紀 基礎生物学研究所准教授、谷口篤史 同博士と共同で、単細胞の繊毛虫テトラヒメナが水中の構造物付近で走流性を示す機構を明らかにしました。

 走流性とは水の流れに逆らって遡上する性質のことを指します。流れ場でのテトラヒメナの動きを顕微鏡観察することに加え、実験結果に基づく流体シミュレーションを行いました。その結果、構造物付近で流れに逆らう行動は「推進力を生み出す繊毛の機械的な刺激応答特性」と「細胞形状」という単純な2つの要素だけで説明できることが明らかになりました。この結果から、遊泳性の繊毛虫が水の流れに身を任せず、自身の生息に適した環境に留まる生存のための行動は、テトラヒメナが意識せずに細胞の性質として自動的に行われているということが示唆されます。

 本研究成果は、2021年10月21日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。

本研究の模式図
図:本研究の模式図
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1126/sciadv.abi5878

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/265517

Takuya Ohmura, Yukinori Nishigami, Atsushi Taniguchi, Shigenori Nonaka, Takuji Ishikawa, Masatoshi Ichikawa (2021). Near-wall rheotaxis of the ciliate Tetrahymena induced by the kinesthetic sensing of cilia. Science Advances, 7(43):eabi5878.