小杉佳久 化学研究所博士課程学生、後藤真人 同助教、譚振宏 同博士課程学生(研究当時)、菅大介 同准教授、島川祐一 同教授、吉井賢資 日本原子力研究開発機構研究主幹、水牧仁一朗 高輝度光科学研究センター主幹研究員、藤田麻哉 産業技術総合研究所研究チーム長、磯部正彦 ドイツ・マックスプランク固体研究所研究員、高木英典 同ディレクターの研究グループは、電荷転移を示すペロブスカイト構造フェリ磁性酸化物BiCu3Cr4O12が磁場および圧力を加えた際に大きな熱量効果(マルチ熱量効果)を示し、高効率な熱制御を実現する新たな固体熱制御材料となることを実証しました。
現在、世界の電力消費の25~30%が冷却に使われていると言われるほど、熱の制御は人類のエネルギー・環境問題において重要な課題となっています。熱量効果を利用すると高効率で環境への負荷の小さい冷却などが実現できるので、熱に関する諸問題の解決に繋がります。本研究では、電荷転移を示すフェリ磁性酸化物BiCu3Cr4O12が磁場と圧力の2つの異なる外場で熱量効果(=マルチ熱量効果)を示すことを見出しました。通常、熱量効果ではその熱特性は1つの外場で制御されますが、今回発見した材料では、磁場と圧力という複数の(=マルチな)手法により熱を効率的に制御できます。磁場と圧力を協同的に加えることでより広範囲な熱特性の制御も可能となり、また新規な高効率冷却技術の発展にもつながります。
本研究成果は、2021年6月21日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1038/s41598-021-91888-8
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/263830
Yoshihisa Kosugi, Masato Goto, Zhenhong Tan, Daisuke Kan, Masahiko Isobe, Kenji Yoshii, Masaichiro Mizumaki, Asaya Fujita, Hidenori Takagi, Yuichi Shimakawa (2021). Giant multiple caloric effects in charge transition ferrimagnet. Scientific Reports, 11, 12682.
朝日新聞デジタル版(6月21日)および日刊工業新聞(6月22日 24面)に掲載されました。