阿形健一 工学研究科修士課程学生、村井俊介 同助教、田中勝久 国際高等教育院教授の研究グループは、自由に切り貼りできるナノアンテナシールの開発に成功しました。
例えば発光素子にシールを貼ることで、発光をより明るくすることができます。本研究グループは次世代の指向性光源開発に向けて、発光に指向性を与えるナノアンテナの研究を行っています。これまでに白色LEDに利用可能な黄色蛍光体基板上にナノアンテナを作製することで、発光の増大と指向性の付与に成功しています。しかし、ナノアンテナ作製には高度に最適化された複雑な工程があり、その工程すべてに適合する特定の材料上にしか作ることができませんでした。これはナノアンテナの応用研究上の大きな妨げでした。
本研究では様々な材料の表面に貼れて何度も繰り返し使えるシールを開発することでこの問題を解決しました。シールは特別な処理なく多くの材料に貼ることが可能で、例えば前述の黄色蛍光体基板上に貼ることで正面方向に3倍程度の発光強度の増加が見られました。現状でシールの性能は直接作製したナノアンテナの半分程度ですが、今後の研究により、直接作製したナノアンテナに迫るシールの開発を目指します。
本研究成果は、2021年1月14日に、国際学術誌「Applied Physics Letters」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】 https://doi.org/10.1063/5.0034115
Kenichi Agata, Shunsuke Murai, and Katsuhisa Tanaka (2021). Stick-and-play metasurfaces for directional light outcoupling. Applied Physics Letters, 118(2):021110.
日刊工業新聞(1月15日 30面)に掲載されました。