狙った細胞内小器官脂質の可視化に成功 -オートファゴソーム形成機構解明に貢献-

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浜地格 工学研究科教授、田村朋則 同講師らの研究グループは、細胞内小器官(オルガネラ)膜の主要構成成分であるリン脂質(ホスファチジルコリン:PC)を選択的に蛍光標識し、細胞内での動きをリアルタイムに可視化できる新しい方法を開発しました。

PCは主に小胞体やゴルジ体で生合成された後、他のオルガネラ(例えばミトコンドリア膜や形質膜)に輸送されます。こうしたPC輸送は細胞の機能や生存に重要ですが、直接観察する方法が無かったため、これまで理解が不十分でした。本研究グループは、「オルガネラに局在する反応性試薬」と「PCの代謝的アジド化法」を組み合わせた独自のアイデアで、特定のオルガネラにあるPCを選択的に蛍光標識することに成功し、オルガネラ間PC輸送の可視化を世界で初めて実現しました。さらに、オートファジー(2016年に大隅良典 博士がノーベル賞受賞)の際に出現する膜の起源解明に本手法を適用し、小胞体膜がオートファゴソームにPCを供給する様子を生細胞内で直接観察することに初めて成功しました。

本研究成果は、研究ツールの乏しさゆえに不明な点の多い細胞内脂質輸送機構の解明に向けた大きなブレークスルーにつながると期待されます。

本研究成果は、2020年9月22日に、国際学術誌「Nature Chemical Biology」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41589-020-00651-z

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/259230

Tomonori Tamura, Alma Fujisawa, Masaki Tsuchiya, Yuying Shen, Kohjiro Nagao, Shin Kawano, Yasushi Tamura, Toshiya Endo, Masato Umeda & Itaru Hamachi (2020). Organelle membrane-specific chemical labeling and dynamic imaging in living cells. Nature Chemical Biology, 16(12), 1361-1367.