液晶のような超伝導の配向パターンの制御に成功 -ネマティック超伝導のドメインエンジニアリングへ-

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Ivan Kostylev 理学研究科博士課程学生(現・沖縄科学技術大学院大学博士研究員)、米澤進吾 同准教授、前野悦輝 同教授らの研究グループは、「ネマティック超伝導体」を一方向に圧縮することで電子ペアの配向パターンを制御できることを発見しました。具体的には、ビスマス-セレン系超伝導体への圧縮力の印加・開放によって、特定の配向方向を持つ領域(ドメイン)が試料内に複数共存している状態とほぼ単一のドメインしかない状態との間を可逆的に移行できました。

日常使われている液晶ディスプレイでは、棒状の液晶分子の向きが一方向に配向した「ネマティック液晶」が用いられ、電圧でこの配向パターンが制御されて光の透過性が変えられています。超伝導の世界では、液晶に似た「ネマティック超伝導」が最近見つかりました。超伝導は低温で電気抵抗がゼロになる現象で、伝導電子が結合し多数のペアを作ることで起こります。この結合が特定の方向で強くなるようにペアたちが配向したのがネマティック超伝導です。

本研究によって発見されたこのような超伝導の制御は超伝導の100年超の研究の中でも前例がなく、「超伝導ドメインエンジニアリング」ともいうべき基礎・応用両面での新たな研究発展が期待できます。

本研究成果は、2020年8月24日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載され、同誌のEditors’ Highlightに選ばれました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-020-17913-y

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/254081

Ivan Kostylev, Shingo Yonezawa, Zhiwei Wang, Yoichi Ando & Yoshiteru Maeno (2020). Uniaxial-strain control of nematic superconductivity in SrxBi2Se3. Nature Communications, 11:4152.