光合成細菌を用いてクモ糸を作ることに成功 -天然資源を利用した物質生産のモデル微生物-

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沼田圭司 工学研究科教授(理化学研究所チームリーダー)、チューン・ピン・フーン 同特定助教、樋口美栄子 理化学研究所研究員らの研究グループは、原始的な光合成生物である海洋性の「紅色光合成細菌」を用いてクモ糸シルクタンパク質を生産することに成功しました。

今回、本研究グループは、海洋性の紅色光合成細菌にジョロウグモの牽引糸タンパク質の一つである「MaSp1」をコードする遺伝子を導入し、細胞内で発現させることに成功しました。紅色光合成細菌は、二酸化炭素固定能に加えて窒素固定能を持つことが知られています。そこで、人工海水の培地に炭酸水素ナトリウムと窒素ガスを加えた条件において紅色光合成細菌を培養した結果、栄養源豊富な培地で培養した場合の約7.5%に相当する量のMaSp1タンパク質を生産できました。さらに、紅色光合成細菌が生産したMaSp1タンパク質を精製し、タンパク質を有機溶媒に溶解し、延伸することにより、クモ糸様のファイバー構造を再現することに成功しました。

海洋性の紅色光合成細菌は、地球上に豊富に存在する海水、窒素、二酸化炭素、光を生育に用いることができる微生物であることから、本研究成果は、天然資源の利用による持続可能な物質生産技術の一つとして、地球環境の保全に貢献すると期待できます。

本研究成果は、2020年7月8日に、国際学術誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載されました。

図:海洋性の紅色光合成細菌を用いたクモ糸シルクの生産

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s42003-020-1099-6

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/252537

Choon Pin Foong, Mieko Higuchi-Takeuchi, Ali D. Malay, Nur Alia Oktaviani, Chonprakun Thagun & Keiji Numata (2020). A marine photosynthetic microbial cell factory as a platform for spider silk production. Communications Biology, 3:357.