新型コロナウイルス報告数は流行を反映しない可能性を示唆 -検査陽性報告数のみを用いた流行解析には注意が必要-

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水本憲治 白眉センター特定助教、大森亮介 北海道大学准教授らの研究グループは、流行初期における日本の新型コロナウイルス感染症の報告数の時間変化が、一般的に感染症流行下で観察される曲線にあてはまらず、直線的な変動をしている事を発見しました。

2019年12月に中国で確認された新型コロナウイルス感染症はパンデミックとなり世界的な流行となっています。流行状況の把握のために、確定患者、つまり、PCR検査で陽性となった方の検査陽性報告数(報告数)の時系列が多くの国で公開されており、このデータから流行状況を解析する研究が多く見られます。

しかし、本研究成果は、この期間における報告数の増減は、流行の進行による感染者の増減によるものではない可能性があり、この期間の報告数の時間変化だけでは流行状況を判断することが難しいことを示唆しています。

また、ある時点から、直線的な変動から曲線的な変動に切り替わっている事も発見しました。その時点から、報告数の時間変化によって流行状況を判断することが可能になったと考えられます。報告数データが流行状況を捉えられない原因のひとつとして検査数の不足が挙げられます。実際、パターンが変化した時点付近で1日当たりの検査数が大幅に増加しており、検査数の改善により、報告数データで流行状況を捉える事が可能になったと考えられます。

本研究成果は、2020年4月19日に、国際学術誌「International Journal of Infectious Diseases」のオンライン版に掲載されました。

図:新型コロナウイルス感染症の累積報告数と検査数

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.04.021

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250721

Ryosuke Omori, Kenji Mizumoto, Gerardo Chowell (2020). Changes in testing rates could mask the novel coronavirus disease (COVID-19) growth rate. International Journal of Infectious Diseases, 94, 116-118.