小野輝男 化学研究所 教授、塩田陽一 同助教、石橋未央 同博士課程学生らの研究グループは、二つの磁石の磁極が逆方向に結合した人工反強磁性体において、スピン波の巨大な非相反性を制御する事に成功しました。
非相反性とは、ある方向に伝搬する波と180度逆の方向に伝搬する波が異なる性質を持つことをいいます。今回研究対象とした人工反強磁性体では、スピン波が伝搬方向に依存して異なる共鳴周波数を持ち、その非相反性は界面効果に起因した従来の報告に比べて非常に大きいことがわかりました。これは、アンテナで励起したスピン波が、伝搬方向によって波長が異なることを意味しています。また、人工反強磁性体中の磁極の向きを電流によって制御する事で、非相反性を制御できることを今回初めて実証しました。本研究成果は、スピン波を利用した論理演算素子などへの応用が期待されます。
本研究成果は、2020年4月25日に、国際学術誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1126/sciadv.aaz6931
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250670
Mio Ishibashi, Yoichi Shiota, Tian Li, Shinsaku Funada, Takahiro Moriyama and Teruo Ono (2020). Switchable giant nonreciprocal frequency shift of propagating spin waves in synthetic antiferromagnets. Science Advances, 6(17):eaaz6931.
- 日刊工業新聞(4月27日 23面)に掲載されました。