超流動ヘリウム中の流れの可視化に成功 -物理学の未解決問題に光-

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伊藤大介 複合原子力科学研究所助教、フォルカ・ゾンネンシャイン 名古屋大学助教、松下琢 同講師、J-PARCセンター、総合科学研究機構中性子科学センターらの研究グループは、可搬型の小型計測装置を開発し、超流動 4 Heに中性子ビームを照射することによって生成された 4 He 2 エキシマーからの発光現象の確認に成功しました。

乱流は物理学の未解決問題の一つですが、その理解のために超流動中の量子乱流が注目されています。本研究グループでは、中性子を照射することで生成される 4 He 2 エキシマー集団をトレーサーとして超流動 4 He中の流れを可視化するプロジェクトを推進しており、本研究では 4 He 2 エキシマーを可視化するための蛍光誘起レーザーの小型化等により、計測装置を可搬型にし、中性子施設のように制限された環境で、従来よりも効率よく 4 He 2 エキシマー蛍光を観測することを可能にしました。これは、超流動 4 He中の流れの完全可視化にむけた第一歩になる成果です。

本研究成果は、2020年3月19日に、国際学術誌「Review of Scientific Instruments」に掲載されました。

図:今回開発した小型Ti:Sapphireレーザー

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1063/1.5130919

V. Sonnenschein, Y. Tsuji, S. Kokuryu, W. Kubo, S. Suzuki, H. Tomita, Y. Kiyanagi, T. Iguchi, T. Matsushita, N. Wada, M. Kitaguchi, H. M. Shimizu, K. Hirota, T. Shinohara, K. Hiroi, H. Hayashida, W. Guo, D. Ito, and Y. Saito (2020). An experimental setup for creating and imaging 4He2* excimer cluster tracers in superfluid helium-4 via neutron-3He absorption reaction. Review of Scientific Instruments, 91(3):033318.