山本由美 iPS細胞研究所研究員(現・国立循環器病研究センター研究員)、井上治久 同教授らの研究グループは、 曽根正勝 医学研究科特定准教授、 猪原匡史 国立循環器病研究センター 部長らの研究グループと共同で、遺伝性脳小血管病CADASIL患者のiPS細胞から血管壁細胞を分化誘導し、その病態を試験管内で再現することに成功しました。
希少難病CADASIL (cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy) の病態メカニズムは未だに解明されておらず、治療法も存在しないのが現状です。本研究グループは、成熟した血管壁細胞を患者のiPS細胞から分化誘導する手法を確立しました。この手法で作製したCADASIL iPS細胞由来壁細胞には、患者の血管壁と同様の凝集体が観察されました。また、患者のiPS細胞由来壁細胞の解析から、血管形成や構造の不安定化がCADASILで生じている可能性が示されました。
この病態モデルの解析により、細胞の増殖や遊走に関係する血小板由来成長因子受容体β(PDGFRβ)シグナルの異常が、病態を生じる可能性が見いだされました。
本研究成果は、2020年3月19日に、「Molecular Brain」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1186/s13041-020-00573-w
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/249970
Yumi Yamamoto, Katsutoshi Kojima, Daisuke Taura, Masakatsu Sone, Kazuo Washida, Naohiro Egawa, Takayuki Kondo, Eiko N. Minakawa, Kayoko Tsukita, Takako Enami, Hidekazu Tomimoto, Toshiki Mizuno, Raj N. Kalaria, Nobuya Inagaki, Ryosuke Takahashi, Mariko Harada-Shiba, Masafumi Ihara & Haruhisa Inoue (2020). Human iPS cell-derived mural cells as an in vitro model of hereditary cerebral small vessel disease. Molecular Brain, 13:38.
- 朝日新聞(3月19日 12面)および日刊工業新聞(3月20日 25面)に掲載されました。