構造物の内部状態を推定できる解析手法を提案 -データ駆動型アルゴリズムにより堤体内部の弾性係数を推定-

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Michael C. Koch 農学研究科 研究員、藤澤和謙 同准教授、村上章 同教授らの研究グループは、アジョイント・ハミルトニアン・モンテカルロ(Adjoint Hamiltonian Monte Carlo)法と呼ぶ解析手法を提案し、幅広い問題に対して、空間的に分布する物性値を推定することを可能にしました。本手法は、ベイズ推定に基づき、結果から原因を推定する逆問題を解析するものです。

また、その具体的な応用例として、物体を伝わる弾性波をその表面において観測することで、物体内部の弾性係数の空間分布を推定できることを示しました。

日本政府が推進する防災・減災、国土強靭化を背景として、インフラ施設の安全性を評価することが求められています。そこでは、構造物や地盤の内部状態を非破壊で把握する技術が重要な役割を果たします。このような技術には、基礎的な解析手法として、構造物や地面を伝わる弾性波をその表面で観測することで、地中及び堤体(ダムや堤防の本体部分)内部の弾性係数分布を推定する逆問題が直結します。しかし、観測値から空間的に分布する物性値を推定するこの問題は、推定対象とする未知数が多いため、従来のモンテカルロ法では解を求めることが困難でした。

そこで本提案手法は、ハミルトニアン・モンテカルロ法にアジョイント法を組み込むことで、未知数の数に依存しない効率的な計算を実現しました。構造物の内部や地下に分布する物性値を可視化できる本手法は、社会的要請の高い技術と考えられます。本提案手法が、土木分野のみならず、機械工学分野や地球科学分野など、応用上重要な多くの問題に対して適用されることが期待されます。

本研究成果は、2019年10月23日に、国際学術誌「International Journal for Numerical Methods in Engineering」のオンライン版に掲載されました。

図:本手法によって堤体内部に分布する弾性係数を推定し可視化した

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1002/nme.6256

Michael C. Koch Kazunori Fujisawa Akira Murakami (2020). Adjoint Hamiltonian Monte Carlo algorithm for the estimation of elastic modulus through the inversion of elastic wave propagation data. International Journal for Numerical Methods in Engineering, 121(6), 1037-1067.