西道啓博 基礎物理学研究所 特定准教授(東京大学客員科学研究員)、高田昌広 東京大学主任研究者は、弘前大学、国立天文台、名古屋大学の研究者らと共同で、現在の宇宙で観測される銀河の大域的空間分布に見られる「網の目構造」の起源を調査するために、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイ」及び「アテルイII」を用いて、大規模な宇宙の構造形成シミュレーションを実行しました。
ダークマター、ダークエネルギーなどの宇宙の組成、またインフレーションモデルが予言する宇宙の初期条件に関するパラメータが構成する多次元空間から101個の代表点を選び出し、これら全てを網羅するシミュレーション群を実行することで、大規模なデータベースを構築しました。さらに、このデータベースを分析するAIフレームワーク「ダークエミュレータ」を開発し、「任意の」宇宙モデルにおける宇宙の大規模構造の観測量を正確かつ高速に計算することに成功しました。
ダークエミュレータを用いることで、スーパーコンピュータでは数日かかる理論予言を、元々のシミュレーションの結果と遜色のない精度を保ちながらもノートパソコンで数秒以内に計算することが可能になります。これは計算コストをおおよそ1億分の1に低減したことになり、実観測データから宇宙の根源的な情報を引き出す操作を飛躍的に高速化することを可能としました。
本研究成果は、2019年10月8日に、国際学術誌「The Astrophysical Journal」のオンライン掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.3847/1538-4357/ab3719
Takahiro Nishimichi, Masahiro Takada, Ryuichi Takahashi, Ken Osato, Masato Shirasaki, Taira Oogi, Hironao Miyatake, Masamune Oguri, Ryoma Murata, Yosuke Kobayashi, and Naoki Yoshida (2019). Dark Quest. I. Fast and Accurate Emulation of Halo Clustering Statistics and Its Application to Galaxy Clustering. The Astrophysical Journal, 884(1):29.