角膜内皮再生医療の新しい数値指標の開発に成功 -物理マーカーで予後の予測を可能に-

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田中求 高等研究院 特任教授(ドイツ・ハイデルベルク大学教授)と山本暁久 同特定助教の研究グループは、外園千恵 京都府立医科大学 教授、上野盛夫 同学内講師らの研究グループと共同で、角膜など再生医療に用いる「培養している移植用細胞の品質」と「移植してからの組織の予後」の両方を統合的に評価できる、新しい数値指標を開発しました。

本学の研究グループは、これまで注目されてこなかった「細胞の集団としての秩序(そろい方)」に着目し、微粒子などを扱う「コロイド物理」を駆使し、隣り合った細胞だけでなく全ての細胞ペアの相互作用の強さを数値化することに成功しました。この新しい評価手法を用いると、細胞のロスをなくして培養コストを大きく削減できるほか、眼科検査で撮影した画像から治療の予後評価を数値化することが可能です。

本研究では、移植後6か月の角膜の画像から2年後の予後を予測することができたため、悪くなる前(未病)の段階で治療を行う「先制医療」への展開が大きく期待されます。

本研究成果は、2019年7月23日に、国際学術誌「Nature Biomedical Engineering」のオンライン版に掲載されました。

図:「コロイド物理」の学理を活かして、再生医療に用いる「培養している移植用細胞の品質」と「移植してからの組織の予後」の両方を統合的に評価するだけでなく、予後予測による先制医療を可能にする新たな物理マーカーを開発

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41551-019-0429-9

Akihisa Yamamoto, Hiroshi Tanaka, Munetoyo Toda, Chie Sotozono, Junji Hamuro, Shigeru Kinoshita, Morio Ueno & Motomu Tanaka (2019). A physical biomarker of the quality of cultured corneal endothelial cells and of the long-term prognosis of corneal restoration in patients. Nature Biomedical Engineering, 3(12), 953-960.

  • 日刊工業新聞(7月23日 29面)および日本経済新聞(7月29日 29面)に掲載されました。