生命が居住可能な系外惑星へのスーパーフレアの影響を算出 -ハビタブル惑星における宇宙線被ばくの定量化に成功-

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山敷庸亮 総合生存学館 教授、 佐々木貴教 理学研究科助教、柴田一成 同教授、 前原裕之 国立天文台 助教、Vladimir Airapetian アメリカ航空宇宙局ゴダード宇宙飛行センター(NASA/GSFC) 博士、野津湧太 コロラド大学・ 日本学術振興会海外特別研究員、佐藤達彦 日本原子力研究開発機構 研究主幹、野津翔太 ライデン大学・ 日本学術振興会海外特別研究員らの研究グループは、太陽型恒星でのスーパーフレアの発生頻度とエネルギーおよび極紫外線を考慮した惑星放射線環境と大気散逸の定量的評価を世界で初めて行いました。また、フレアにより放出される高エネルギー宇宙放射線によって起こりうる地表面での被ばく量は、惑星が地球と同じ大気圧を備えている限り地球型生命にとって致命的なレベルにはならないことを明らかにしました。

さらに、近年生命の居住可能性(ハビタブル)が議論されているプロキシマ・ケンタウリb(Proxima Centauri b)やトラピスト- I e(TRAPPIST- I e)などでは、惑星がより中心星に近い位置に存在することなどの理由で、大気散逸(大気が宇宙空間に流出すること)が地球に比して70倍前後になることから大気圧が十分ではなく、高エネルギー宇宙放射線が惑星表面に直接到達してしまうため、毎年1度発生する規模のフレアでも致命的な被ばくを受ける可能性があることが判明しました。したがって、これらの惑星においては、内部からのガス放出が継続するか、惑星磁場が形成されていない限り、ハビタブルであると評価することは困難であると考えられます。

また、同じモデルを用いて観測史上最大級の太陽フレアが発生した場合の地球と火星における被ばく量を推定したところ、地球の方が太陽に近いものの強い磁場や大気に守られている分、被ばく量がはるかに小さくなることが分かりました。なお、生命の放射線耐性は種に大きく依存しますが、本研究では人間と同程度の耐性を持つ生命を想定しました。

本研究成果は、2019年7月16日以降に、国際学術誌「The Astrophysical Journal」のオンライン版に掲載される予定です。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.3847/1538-4357/ab2a71

Yosuke A. Yamashiki, Hiroyuki Maehara, Vladimir Airapetian, Yuta Notsu, Tatsuhiko Sato, Shota Notsu, Ryusuke Kuroki, Keiya Murashima, Hiroaki Sato, Kosuke Namekata, Takanori Sasaki, Thomas B. Scott, Hina Bando, Subaru Nashimoto, Fuka Takagi, Cassandra Ling, Daisaku Nogami, and Kazunari Shibata (2019). The Astrophysical Journal. The Astrophysical Journal, 881(2):114.

  • 京都新聞(7月17日 29面)、日刊工業新聞(7月24日 33面)および日本経済新聞(7月17日 12面)に掲載されました。