鈴木肇 工学研究科助教、阿部竜 同教授、 佐伯昭紀 大阪大学教授らの研究グループは、光触媒の性能を速く簡便に評価する手法を確立し、ビスマス系のオキシハライド光触媒の最適な焼結温度を導いた結果、光触媒能を従来の約3倍に向上させることに成功しました。
ほぼ無尽蔵に地球に降り注ぐ太陽光エネルギーを利用することは、持続可能な社会の実現にとって非常に有効です。光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池に加え、本多・藤嶋が1972年に二酸化チタンで報告した光エネルギーを化学エネルギーに変換する光触媒も世界中で研究が進められています。しかし、光触媒の性能はその電子特性や電気特性に加え、粒径、表面形状、助触媒の物性、焼結温度、組成比など多くの因子が複雑に影響し、高効率化には多大な時間と労力を必要としてきました。
今回、佐伯教授らがこれまでに開発した、簡便に光電気特性を評価できるマイクロ波分光法を用いてオキシハライド光触媒1を評価したところ、信号の強度と減衰寿命の積が、光触媒による酸素発生速度と相関する指標となることを見いだしました。この相関に基づいて、新しく報告されたオキシハライド光触媒2の最適な焼結温度を導き、実際に光触媒能を従来の約3倍に向上させることに成功しました。
本研究によって得られた量子収率(3%)は固相反応で作製したオキシハライド光触媒の中で世界最高値であり、今回実証した手法は今後、他の光触媒材料のスクリーニングに期待できます。
本研究成果は、2019年6月18日に、国際学術誌「ACS Energy Letters」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1021/acsenergylett.9b00793
Hajime Suzuki, Masanobu Higashi, Hironobu Kunioku, Ryu Abe and Akinori Saeki (2019). Photoconductivity-Lifetime Product Correlates Well with the Photocatalytic Activity of Oxyhalides Bi4TaO8Cl and PbBiO2Cl: An Approach to Boost Their O2 Evolution Rates. ACS Energy Letters, 4, 1572-1578.
- 日刊工業新聞(6月26日 25面)に掲載されました。