永谷清信 理学研究科助教、 福澤宏宣 東北大学 助教、上田潔 同教授、河野裕彦 同名誉教授らの研究グループは、X線を気相の孤立した多原子分子に照射してから数10フェムト秒(1フェムト秒は千兆分の1秒)で完結する超高速反応を観測することに成功しました。また、観測した超高速反応の中にも、メカニズムが異なる反応が存在することが明らかになりました。レントゲンがX線を発見してから120年が経ちますが、X線が誘起する孤立した多原子分子中での超高速反応の観測に成功した研究は初めてです。
X線を生体分子に照射すると放射線損傷と呼ばれる分子の破壊が起こりますが、そのメカニズムは解明されていません。放射線損傷を制御できれば、例えば放射線を用いたがん治療を正確に効率よく実施することが可能となります。本研究成果は、放射線損傷機構解明に向けた大きな発展につながることが期待されます。
本研究成果は、2019年5月16日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-019-10060-z
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/241634
Hironobu Fukuzawa, Tsukasa Takanashi, Edwin Kukk, Koji Motomura, Shin-ichi Wada, Kiyonobu Nagaya, Yuta Ito, Toshiyuki Nishiyama, Christophe Nicolas, Yoshiaki Kumagai, Denys Iablonskyi, Subhendu Mondal, Tetsuya Tachibana, Daehyun You, Syuhei Yamada, Yuta Sakakibara, Kazuki Asa, Yuhiro Sato, Tsukasa Sakai, Kenji Matsunami, Takayuki Umemoto, Kango Kariyazono, Shinji Kajimoto, Hikaru Sotome, Per Johnsson, Markus S. Schöffler, Gregor Kastirke, Kuno Kooser, Xiao-Jing Liu, Theodor Asavei, Liviu Neagu, Serguei Molodtsov, Kohei Ochiai, Manabu Kanno, Kaoru Yamazaki, Shigeki Owada, Kanade Ogawa, Tetsuo Katayama, Tadashi Togashi, Kensuke Tono, Makina Yabashi, Aryya Ghosh, Kirill Gokhberg, Lorenz S. Cederbaum, Alexander I. Kuleff, Hiroshi Fukumura, Naoki Kishimoto, Artem Rudenko, Catalin Miron, Hirohiko Kono & Kiyoshi Ueda (2019). Real-time observation of X-ray-induced intramolecular and interatomic electronic decay in CH2I2. Nature Communications, 10:2186.