白井康之 エネルギー科学研究科教授、中村武恒 工学研究科准教授、三菱電機株式会社、津田理 東北大学工学研究科教授らの研究グループは、枯渇が懸念されている液体ヘリウムが不要な高温超電導コイルをMRIミニモデルに搭載し、世界初の磁界強度3テスラでの撮像に成功しました。
本研究成果は、2016年5月30日に開催された「第93回低温工学・超電導学会研究発表会(於:タワーホール船堀)」にて発表されました。
研究者からのコメント
2020年度までに実用機の半分サイズのMRIを試作するとともに、高温超電導コイルの設計・製造基盤技術を構築し、高安定磁界システムの実用化に向けた研究開発を推進します。また、2021年度以降に実用機サイズのMRIコイル試作を行うなど、早期の事業化を目指します。
概要
超電導には低温超電導コイル方式と高温超電導コイル方式があり、現在は液体ヘリウムを用いてマイナス269度以下まで冷却する低温超電導コイル方式がMRIや一部の分析機器に適用されています。
しかし、ヘリウムガスを事業の採算に見合うコストで採取できるガス田がもともと少なく、備蓄も底をつき始める一方で、新興国の発展により需要が増えていることから、将来は枯渇する恐れがあるといわれています。
このため、液体ヘリウムにより冷却が不要な高温超電導コイル方式の電気機器への適用が期待されています。低温超電導線に比べて高温超電導線は同じ断面積で大きな電流を流せるため、より小さなコイルで同等の磁界を発生させることができ、適用する電気機器の小型化もできます。
本研究グループは、2013年度から国家プロジェクト、経済産業省「高温超電導コイル基盤技術開発プロジェクト」において、高温超電導線を用いたコイルの設計・製造に関する基本技術を確立し、液体ヘリウム不要の高温超電導コイルを開発するとともに、今回、技術レベルの実証として、MRIミニモデルで世界初の磁界強度3テスラでの撮像に成功しました。
これにより、高い磁界強度のMRIはより高精細な画像での診断を実現し、病気の早期発見につながります。また、MRI以外の高い磁界強度を必要とする電気機器へ高温超電導コイルの適用も期待できます。
MRIミニモデル用高温超電導コイル(左)とマウス胎児の撮像写真(全長約25mm)(右)
詳しい研究内容について
- 日刊工業新聞(5月25日 27面)、化学工業日報(5月25日 7面)、科学新聞(6月17日 5面)、神戸新聞(5月25日 10面)、電気新聞(5月25日 4面)に掲載されました。