水谷圭一 情報学研究科助教、原田博司 同教授らの研究グル‐プは、2020年以降に導入が検討されている第5世代移動通信システム (5G) で利用可能な超高密度周波数配置が可能な通信方式UTW‐OFDM方式の開発に成功しました。
このシステムは計算量の少ない時間軸窓処理を用いて帯域外不要輻射を抑圧することにより、現在第4世代移動通信システムLTE等で採用されているCP‐OFDM方式と比べ、同じチャネル幅で伝送した場合、チャネル外不要電波を約30dB(1000分の1)以上削減することが可能です。
研究者からのコメント
今後の無縁通信トラヒックの増大や多様化に対応するためには、これまで以上に高効率に無線周波数を利用することが求められます。しかし従来広く採用されているOFDM方式では、チャネル帯域外への不要な漏れ電力(不要輻射)が高く、高密度な周波数利用の妨げとなっていました。今回開発したUTW‐OFDM方式により、簡単な操作でこの問題となる帯域外への不要輻射を十分抑圧することが可能となり、さらに提案UTW‐OFDM方式は従来のOFDM方式との互換性が高いため、第5世代移動通信システム(5G)を始めとする新しい無線通信システムにおいて、提案方式により高密度かつ高効率な周波数利用が実現されることが期待されます。
概要
現在、端末数の激増ならび超高速のデータから超多数の低速伝送のセンサーまで多様化する無線通信のトラフィックを収容するために、第5世代移動通信システム (5G) の研究開発が国際的に進められています。しかし、移動通信に適した周波数は現在逼迫しており、限りある周波数資源を有効利用するためには、現在利用可能な第4世代移動通信システムLTEとも後方互換性があり、さらに周波数の高密度配置が可能な通信方式の開発が急務となっています。
今回、無線周波数利用効率を改善するために、利用効率劣化の原因となる「割り当てチャネル帯域外へ漏れ出る不要輻射電力」を簡単な信号処理で抑圧できる新しい通信方式(UTW‐OFDM方式)、およびシステムを提案・開発しました。
従来は、時間軸窓処理と周波数フィルタ処理を用いて、この帯域外不要輻射を抑圧する手法が一般的でしたが、特に周波数フィルタ処理に係る計算量が大きくなる問題がありました。今回開発したUTW‐OFDM方式では、計算量が少なく、超低速から超高速まで様々なアプリケ‐ションや環境に柔軟に対応可能な時間軸窓処理のみを用いて帯域外不要輻射を抑圧します。また、現在運用中の携帯電話システムLTEにも簡単に導入可能です。
図:割り当てチャネル帯域外へ漏れ出る不要輻射電力を簡単な信号処理で抑圧