SACLAのX線自由電子レーザーを用いた新規タンパク質立体構造決定に世界で初めて成功

ターゲット
公開日

中津亨 薬学研究科准教授、潘東青 同元研究員、村井智洋 同博士前期課程学生、加藤博章 同教授、山下恵太郎 理化学研究所放射光科学総合研究センタービームライン基盤研究部基礎科学特別研究員、吾郷日出夫 同専任研究員、山本雅貴 同部長、岩田想 医学研究科教授(理化学研究所放射光科学総合研究センターSACLA利用技術開拓グループディレクター)、 矢橋 牧名 理化学研究所放射光科学総合研究センターXFEL研究開発部門ビームライン研究開発グループディレクター、登野健介 高輝度光科学研究センターXFEL利用研究推進室チームリーダー等による合同研究チームは、非常に強力なX線を発するX線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを用いて、異常分散効果を利用した重原子同型置換法(SIRAS)により新規タンパク質の立体構造決定に成功しました。

本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」誌に9月11日付けで掲載されました。

研究者からのコメント

左から中津准教授、村井博士前期課程学生

日本のX線自由電子レーザー施設:SACLAの特性である高エネルギーのX線を利用し、構造未知のμmサイズのタンパク質結晶を用いた構造解析に成功しました。この成果をもとに、さらに簡便かつ汎用性の高い構造解析法の確立を目指します。これにより、これまでは困難であった創薬の鍵となる膜タンパク質の立体構造決定が飛躍的に進み、創薬への応用が期待できます。

概要

世界に二つしかないXFEL施設(SACLAと米国のLCLS)はSPring-8のような放射光施設に比べ10億倍程度のX線の輝度があります。そのため、これまで不可能であった数μmサイズのタンパク質微結晶での立体構造決定が行われるようになってきました。しかしながら、構造決定できるものは、すでに立体構造が明らかになっている構造を用いたものに限られていました。

そこで合同研究チームは、立体構造未知であるルシフェリン再生酵素というタンパク質の数μmサイズの微結晶をまず作成しました。その後、SACLAにおいてデータ収集を行い、異常分散効果を利用した重原子同型置換(SIRAS)法により立体構造を明らかにしました。

解析に使用したルシフェリン再生酵素の微結晶(左)と立体構造(右)

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep14017

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/199881

Keitaro Yamashita, Dongqing Pan, Tomohiko Okuda, Michihiro Sugahara, Atsushi Kodan, Tomohiro Yamaguchi, Tomohiro Murai, Keiko Gomi, Naoki Kajiyama, Eiichi Mizohata, Mamoru Suzuki, Eriko Nango, Kensuke Tono, Yasumasa Joti, Takashi Kameshima, Jaehyun Park, Changyong Song, Takaki Hatsui, Makina Yabashi, So Iwata, Hiroaki Kato, Hideo Ago, Masaki Yamamoto, Toru Nakatsu
"An isomorphous replacement method for efficient de novo phasing for serial femtosecond crystallography"
Scientific Reports 5, Article number: 14017 Published: 11 September 2015

  • 京都新聞(9月15日 29面)および読売新聞(9月28日 15面)に掲載されました。