2014年9月1日
木内建太 基礎物理学研究所特任助教らの研究グループは、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」を用いて、連星中性子星の合体およびその後の進化過程の新たな描像を示すことに成功しました。
本研究成果は、アメリカ物理学会が発行する学術雑誌「Physical Review D」(2014年8月28日号)に掲載されました。
研究者からのコメント
本研究では、連星中性子星のいくつかあるモデルのうち限定的なものを扱いました。今後は他のモデルも検討し、より系統的な研究が期待されます。
また、本研究では合体過程で磁場が有意に増幅することが示されましたが、最終的にどの程度まで増幅されるかは今後の課題です。さらに、合体により形成されるブラックホール-降着円盤がガンマ線バーストを駆動するのかどうかを突き詰める必要があります。
概要
二つの中性子星からなる連星中性子星は重力波の発生により合体し、ガンマ線バーストと呼ばれる爆発現象を起こす可能性があります。また、重元素合成を引き起こしている天体の候補でもあります。そのため連星中性子星合体の解明が求められており、理論、観測に加えて数値シミュレーションからのアプローチが進んでいます。
同研究グループは中性子星がもつ磁場に着目し、合体とその後の進化にどのように影響を及ぼすかを探りました。その結果、従来は合体後形成されるブラックホール周辺の降着円盤内で磁場が増幅されるとされていましたが、二つの磁気流体不安定性によりブラックホールの形成前に磁場が増幅されることがわかりました。
図:磁力線(白色線)、磁場強度(左上図:水色)、密度等値面(右上図、左下図:黄色、濃い青、薄い青)
詳しい研究内容について
連星中性子星の合体とブラックホールの進化過程に新解釈 -スーパーコンピュータ「京」で磁場の増幅機構が明らかに-
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevD.90.041502
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/189621
Kenta Kiuchi, Koutarou Kyutoku, Yuichiro Sekiguchi, Masaru Shibata, and Tomohide Wada
"High resolution numerical relativity simulations for the merger of binary magnetized neutron stars"
PHYSICAL REVIEW D 90(4), 041502(R) Published 28 August 2014
掲載情報
- 日刊工業新聞(9月9日 22面)に掲載されました。