本学と国立研究開発法人理化学研究所は、2016(平成28)年に「理化学研究所と京都大学との連携・協力の推進に関する基本協定」を締結し、2018(平成30)年には、高等研究院に「理研-京大数理科学連携拠点」を設置し、数理科学を軸に、自然科学はもとより、医学、社会科学など広範な分野を対象に世界最先端の数理・融合研究の展開、新たな研究領域の開拓、およびそれらを担う次世代人材の育成を推進してきました。
本学と理化学研究所は、より一層強固な連携のあり方を協議してきましたが、この度、両機関がそれぞれに最先端の研究と研究者の厚みを有し、かつ、全ての基礎科学の基本を支える技術であるとともに、Society 5.0の実現に資する基盤技術である光量子科学分野の新規拠点(理研-京大光量子科学連携拠点)を設置し、連携を開始することとしました。これとともに数理連携を拡充し、さらには基礎量子科学分野等についても連携の構想を進めていきます。また、クロスアポイントメント制度等の人事制度の柔軟な活用による人材交流の促進や次世代を担う若手研究者育成等の取組みを加えてパッケージとし、2025(令和7)年4月1日より「京都大学と理化学研究所の包括連携2.0」として進めていきます。
本学では、国際卓越研究大学を見据え、2025(令和7)年1月1日に設置された研究推進に係る総合マネジメントを実施する全学組織である総合研究推進本部により、強力に本学と理化学研究所の包括連携2.0を推進します。
理化学研究所では、基礎科学の各研究分野における卓越した研究力や最先端の研究インフラ群を有機的に連携させる仕組み(TRIP: Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platforms)を構築し、研究分野を超えて新たな知を創造するための取組みを推進しています。京都大学との連携においても、広い視野で連携の可能性を探求し、理化学研究所が目指す「つなぐ科学」の取組みを進めていきます。

京都大学 湊長博 総長のコメント
理化学研究所とのパートナーシップは、これまで、「医学と数理」などに代表されるように、数理科学を軸にさまざまな学術分野に展開し、人的交流や研究成果につながってきました。今回、理化学研究所との連携を次なるステージへと移行するにあたり、数学と同様に本学において歴史と強みを有する量子科学分野における連携を強化することにいたしました。
1926年に誕生した量子力学は100年を迎え、2025年は「国際量子科学技術年」と位置付けられています。また、量子科学技術は、量子コンピュータや量子センサなどの従来技術の限界を突破し、物理学や生命科学などの基礎にも質的な変換をもたらしており、現在は「第二次量子革命」の時代と呼ばれています。これらは、我が国の科学技術のみならず、産業構造や社会そのもののあり方に大きな変革をもたらすと言われております。
今回、京都大学内に従前から設置されていた理研-京大数理科学連携拠点に加え、理研-京大光量子科学連携拠点の設置等を通じ、これまで以上に理化学研究所と本学の強みを掛け合わせ、人と知識の交流を通じて、新たな学術の創生と社会への発信・展開を目指していきたいと考えています。
理化学研究所 五神真 理事長のコメント
いま地球規模の諸課題は、かつてない深刻さを見せています。地球温暖化や環境破壊、経済格差や世界の分断といった困難に立ち向かうには、多様な人々の連携によって新たな知を創出し、共に行動することが不可欠です。科学が生みだす信頼と共感こそが、より良い社会の実現を支える力となるはずです。
理化学研究所は、日本で唯一の基礎科学の総合研究所として、幅広く先端的な研究を展開しています。2025年度からの第5期中長期計画では、スーパーコンピュータ「富岳NEXT」や放射光施設「SPring-8-II」を整備し、最先端の研究基盤を提供します。生成AIや量子コンピュータなど技術革新が加速するなかで、その基礎の探求と新たな活用について分野を超えた協働を促し新しい知恵の創出に全力で取り組みます。さらに、大学との新たな連携体制を構築し、次世代の研究者育成にも力を注ぐ方針です。
京都大学は、この計画における、かけがえのない重要なパートナーです。これまでも高等研究院を通じて数理融合分野での国際的な連携研究を進め、優秀な若手研究者や学生の育成に取り組んできました。今回、光量子科学や基礎量子科学の分野を新たに加え、組織レベルでの連携をさらに強化します。連携分野をさらに広げ、科学の力で地球規模課題に挑むとともに、高度な研究人材の育成を京都大学と共に進めていきたいと思います。
組織概要
以下2拠点を、京都大学高等研究院の「理研ー京大最先端研究プラットフォーム(RIKEN-Kyoto University Advanced Research Platform)」※内に設置します。
- 理研-京大光量子科学連携拠点(2025(令和7)年4月1日新規設置)
(HIKARI-COOL Kyoto:HIKARI Cooperative Laboratory Kyoto)
京都大学吉田キャンパス北部総合教育研究棟5階 - 理研-京大数理科学連携拠点
(SUURI-COOL Kyoto:SUURI Cooperative Laboratory Kyoto)
京都大学吉田キャンパス北部総合教育研究棟2階
- 2025(令和7)年4月1日に「理研―京大科学技術ハブ」より改称