このたび、斎藤通紀 高等研究院教授・ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)拠点長が第110回(令和2年)日本学士院賞ならびに恩賜賞を受賞することになりました。日本学士院賞は、学術上特に優れた研究業績に対して贈られるもので、日本の学術賞としては最も権威ある賞です。また、恩賜賞は、日本学士院賞の中から特に優れたものに授与されます。
斎藤通紀 高等研究院教授・ASHBi拠点長
斎藤通紀教授は、平成7年京都大学医学部を卒業、同11年同大学大学院医学研究科博士課程を修了、同年医学博士号を取得、その後、平成11年英国ケンブリッジ大学博士後研究員、同15年理化学研究所発生・再生科学総合研究センターチームリーダー、同21年京都大学医学研究科教授を経て、同30年10月に京都大学高等研究院教授・ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)拠点長に就任し、現在に至っています。
今回の日本学士院賞・恩賜賞受賞の研究題目は、「生殖細胞の発生機構の解明とその試験管内再構成」です。斎藤教授は、マウス生殖細胞の形成機構を解明し、マウス多能性幹細胞から始原生殖細胞様細胞を試験管内で誘導、精子や卵子、健常な産仔を作出することに成功しました。その実験系に基づき、エピゲノムリプログラミングや卵母細胞分化機構・減数分裂誘導機構など、生殖細胞の発生における基幹現象の分子機構を解明しました。また、カニクイザル初期胚の発生機構を解析し、マウス・サル・ヒトにおける多能性細胞系譜の特性や霊長類生殖細胞の発生機構を解明するとともに、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞様細胞、さらに卵原細胞を誘導し、ヒト生殖細胞発生過程の試験管内再構成研究の礎を築きました。斎藤教授の研究は、生命の根源たる生殖細胞の発生機構を解明することでヒトや霊長類の進化機構を明らかにするのみならず、不妊や遺伝病・エピゲノム異常の原因究明につながり、医学に新しい可能性を提示するものです。
なお、斎藤教授の卓越した業績に対し、これまでも平成26年日本学術振興会賞、同26年日本学士院学術奨励賞、同28年武田医学賞、同30年持田記念学術賞、令和2年朝日賞、上原賞、ISSCR Momentum Awardなど、多数の賞が授与されています。
関連リンク
- 日本学士院賞授賞の決定について(日本学士院)
https://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2020/040601.html