京都大学東京オフィスにて、京都大学技術士会が主催する第9回講演会が開催されました。この行事は、会の主要事業の一つである会員の継続研鑽を目的として企画されたもので、関東地区に在住する会員を中心に他大学関係者も含め約60名の参加がありました。
石原吉雄 幹事(工学研究科・1988年修了)が司会進行し、冒頭、武藤光 京都大学技術士会副会長・代表幹事(工学研究科博士課程・1999年修了)より、開会挨拶および京都大学技術士会の概要説明等がありました。それに続き、阪口秀 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)研究担当理事補佐(農学研究科博士課程・1995年博士(農学)取得)の講演会が始まりました。
講演は「工学と理学の狭間 -我々はどこに向かえば良いのか-」と題し、今後さらに学術研究や科学技術が発達していくために必要と考えられる事項に関して、阪口理事補佐の長年の研究や海外での経験を基に、興味深くかつ分かりやすくお話いただきました。
まず、タイトルである「工学」、「理学」、「狭間」のそれぞれについて定義を示し、「工学」は、エネルギーや自然の利用を通じて便宜を得る技術であり、公共のために有効な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問であるのに対して、「理学」は自然科学の基礎研究であり、そもそもの役割が違うことの説明がありました。
その後、所属先のJAMSTECの経営理念を示した上で、独立行政法人および国立研究開発法人の役割などについて紹介があり、「工学」と「理学」のバランスの重要性を説明しました。一方で、地球深部探査船「ちきゅう」、「メタンハイドレート」、「いくつかの大学での取り組み」の事例を用いて、現在の日本が「工学と理学の狭間」で直面している課題を明確に示し、サブタイトルである「我々はどこに向かえば良いのか」のヒントが与えられました。
講演の最後には、(1)教育課程における高度な専門性はキープすること、(2)ダブルメジャーや異なる専門を渡り歩くこと、(3)組織の中では、業務の中で混ざり合うことの3点を、「工学と理学の狭間」の結論として示し、ダメだと感じたら変える勇気を持つことの必要性についても併せて説明しました。
講演終了後の質疑応答では、組織を変えていこうとした場合、周囲が付いてこないなど実際には多くの困難が存在している中で、円滑に変化させていくための方法や工夫についてなど、多くの質問が出されました。最後に、佐竹孝 副代表幹事(工学研究科・1992年修了)より閉会挨拶を行い、盛会のうちに講演会は終了しました。