研究成果活用事業により、「株式会社京都Space Gamma」を創立しました。(2017年3月1日)

公開日

谷森達 理学研究科教授、高田淳史 同助教らの研究グループは、これまで開発してきた幾何光学原理に基づく核ガンマ線画像法や雑音除去法など、一連の核ガンマ線法画像化測定技術(ETCC技術)を社会で活用するため、ホウ素を用いた中性子治療(BNCT)用加速器を開発している福島SIC応用技研株式会社(以下、福島SIC)と共同で、2017年3月1日に株式会社京都Space Gamma(以下、京都SG)を設立しました。

研究者からのコメント

左から、谷森教授、高田助教、石本学 京都SG社長、古久保雄二 福島SIC社長

私たちの「世界初の、光と同様幾何光学原理に基づく定量性を担保したガンマ線画像化法、およびその原理を用いた高精度ガンマ線カメラの開発」の成果を迅速に社会に応用するために、この会社の設立を決断しました。京都SGは、この新しい手法を用いて粒子線治療の可視化、多様なRIを用いた新しい診断薬の開発など、従来困難と考えられていた新しい医療の開拓、また社会での安全安心な放射線利用を目指し、原子力関係施設の高精度な可視化による安全管理の実現、今回の福島の事故のような放射線事故の迅速な対応、今後予想される多くの原子炉の廃炉技術への応用を当面の目的としています。将来は当研究室の夢である、惑星資源探査用衛星開発にもチャレンジしていきたいです。

概要

京都SGは、ETCC技術を応用した全く新しい癌診治療・診断装置および放射線可視化装置の開発、販売を行います。また福島SICは、超小型中性子源を用いたBNCT治療装置を開発中であり、このBNCT装置とETCCを組み合わせ、治療と診断が同一装置で可能となる世界で初めての癌治療・診断装置を製品化します。

BNCT装置を用いたがん治療においては、癌細胞に集積する薬剤にB(ホウ素)の同位体である 10 Bを添加した薬剤(ホウ素薬剤)を患者に投与し、これに低エネルギーの中性子を照射します。 10 Bは中性子を吸収しα線、 7 Liおよび478keVのガンマ線を発生し、同時にホウ素薬剤が集積した癌細胞を破壊します。このガンマ線の大半は体内を透過するため、このガンマ線の方向をETCCで計測、ホウ素薬剤の体内分布および中性子照射量をオンライン計測し、中性子照射位置、量を最適に制御します。このため高い安全性と治療効率を実現し、さらに治療と診断が同一装置で可能となる世界初の装置となります。

すでに本技術によって中性子照射による 10 Bからの478keVガンマ線の画像化に世界で唯一成功しており、この成果を福島SICのBNCT治療装置に組み込み、3年後の臨床応用実現化を目指します。

測定の様子

ETCCで得られたスペクトルと478keVガンマ線画像

詳しい研究内容について