国際共同シンポジウム「教育研究の新たな展開」を開催しました。(2016年12月9日)

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教育学研究科は、国際共同研究や大学院生交換プログラムを進めてきた英国のUCL教育研究所と中国の北京師範大学教育学部と共同で、国際共同シンポジウム「The Future of the Study of Education -教育研究の新たな展開-」を、 百周年時計台記念館 で開催しました。当該大学の研究者や学生に加えて全国から教育関係者など約80名が参加し、南部広孝 教育学研究科准教授の総合司会のもとで、野口由紀子 氏が通訳、Jeremy Rappleye 教育学研究科准教授が補佐を務めました。

本シンポジウムでは、稲垣恭子 教育学研究科副研究科長の挨拶に続き、まず朱旭東 北京師範大学教育学部長・教授が 「Knowledge Graphs of Educational Research on China, America and Japan from Chinese Scholars’ Perspectives」と題する講演を行い、中国において3か国を対象とした教育研究のテーマや研究者がどのように分布しているのかを実証的に示したうえで、政策形成の過程でこうした研究が重視されるようになっており、教育研究の拠点がシンクタンクとして機能しつつあることが紹介されました。

続いて、Paul Standish UCL教育研究所教育哲学センター長・教授が「Science, Humanities and the Rise of Neuroscience」と題する講演を行い、ルネサンス絵画を例に、パースペクティブ(視点)の問題との関わりから科学と人文学の二つの文化を再考しました。そして、急成長を遂げる神経科学研究に対して人文学のもつ妥当性を、脳についての的確な理解には心が作用するホーリスティックな文脈理解が必要であるという観点から例証しました。齋藤直子 教育学研究科准教授は 「Towards an Economy of Beautiful Knowledge 」と題する講演を行い、「役に立つ知識とは何か」という観点から、人文学の危機の時代におけるアメリカ実践哲学の意義を論じ、「優秀な羊」から「野生のマガモ」の教育への転換を提言しました。

最後に、 高見茂 教育学研究科研究科長より「The Future of the Graduate School of Education」と題し、上記の講演内容を踏まえて、本研究科の多様な研究分野におけるAI研究への応用を一例として紹介しながら、AIを教育するという斬新な観点から今後の将来像を提示しました。記念講演の質疑応答では、教育研究の政策形成への貢献のあり方や、人文学が価値や正当化の問題を考慮する上で特権的な地位をもつという科学と人文学の二つの文化の非対照的な関係性、科学と人文学の双方において教育・研究を維持するための資金の本質的な重要性、またこれに基づく学際的な研究と探究の可能性などが討議され、講演者と聴衆がシンポジウム終了後や懇親会でも熱心に議論を続けました。

本シンポジウムでは、国際的で学際的な討議を通じて、人文学と科学の際に立つ教育研究の意義が改めて問い直されました。それを通じて世界各国における教育情勢の変化を背景にした教育学研究科の今後の構想と、教育研究の新たな展開についての理解を深めることができました。今回の国際交流企画では、北京師範大学教育学部とは双方の大学院生が主体的に企画・運営し、共通テーマを発表して議論を深める研究交流会を実施しました。また、UCL教育研究所とは「国際教育研究フロンティアC」を外国の大学院との共同授業という形で開講し、スタンディッシュセンター長・教授の英国式ゼミにおいて、同研究所の博士課程学生5名と教育学部・研究科の学部生・大学院生が活発に英語で議論し学習する様子がOCWで世界配信されます。これらの諸企画を通じ、異文化間の国際交流に教員と大学院生が共に学習しながら参与する、教育学研究科ならではの国際共同教育プログラムの場が創出され、今後、3大学における更なる連携発展につながる成果が生み出されるにいたりました。

左から、講演する朱教授、講演するStandishセンター長・教授 、報告する高見研究科長

左から、講演する朱教授、講演するStandishセンター長・教授 、報告する高見研究科長

会場の様子

会場の様子

全体討議の様子

全体討議の様子(1)

全体討議の様子

全体討議の様子(2)

講演する齋藤准教授

講演する齋藤准教授

集合写真

集合写真