複数の国を流れる越境河川であるメコン川流域は、最上流の中国などにおける開発行為が、中流部のラオス、タイ、カンボジア、さらには最下流のベトナムにおける水量・土砂動態・生態系・沿岸デルタの地下水塩水化などに重大な影響を及ぼしつつあると言われています。メコン川では、このように多国間の利害が対立する水管理問題が顕在化しており、今後は、さらに地球温暖化による降水量変化や海面上昇などの影響も懸念されています。本プログラムでは、このようなメコン川の水管理問題の現状と課題を理解するために、最下流のベトナム、特に、メコンデルタの持続可能性という視点から考えました。
本講義は、角哲也 防災研究所教授とSameh Kantoush 同准教授によって運営され、2、3回生の4人が参加し、3回にわたる国内での事前講義のあと、10日間にわたり現地研修を行いました。
まず、ホーチミン市のThuy Loi(ベトナム水資源)大学・ホーチミン校において、「メコン川の水資源管理」や「気候変動影響と適応策」などの講義を受けるとともに、ホーチミン市近郊の運河・閘門や高潮対策水門などの現地見学を行いました。
次に、メコンデルタの中心にあるCan Tho(カントー)大学に移動して、「メコンデルタの持続可能な開発」や「メコンデルタにおける気候変動影響」などについて講義を受けるとともに、海岸侵食の進む沿岸部やエビ養殖場、河口部の中洲地域の土地利用状況などの見学を行いました。
最後に、再びThuy Loi(ベトナム水資源)大学に戻って、日本およびベトナム双方の学生が参加したワークショップを行いました。日本の学生4人は、気候変動影響、農業、水管理と疾病対策、流域調整のためのメコン川委員会の役割と課題についてそれぞれ英語で発表を行うとともに、ベトナム側の学生からも同様な観点からの発表がなされ、活発な意見交換を行いました。最後に、ベトナムの学生の民族舞踊披露や、日本の学生の合唱などのパフォーマンス交換を行い、友情の輪を広げました。
今回の現地研修では、ベトナムの歴史、文化、産業や生活を知り、メコン川の流域開発や気候変動という大きな環境変化がもたらす水管理への影響に思いを馳せることで、本学学生として求められる国際感覚を磨くことが出来ました。また、美味しいベトナム料理やトロピカルフルーツ、メコン川に沈む夕陽などは一生の思い出となりました。