第23回役員会(別紙3) 平成17年度 予算編成方針

第23回役員会(別紙3) 平成17年度 予算編成方針

役員会  第18回 平成17年1月31日(月曜日)開催

■別紙3

平成17年度 予算編成方針

京都大学

  1. 1.はじめに
  2. 2.平成17年度予算編成の基本的な考え方
  3. 3.教育研究事業等への配分
  4. 4.戦略的・重点的配分に必要な経費のあり方
  5. 5.予備費の確保
  6. 6.全学共通経費のあり方
  7. 7.受託事業等経費
  8. 8.施設費事業費
  9. 9.剰余金の翌事業年度への繰り越し
  10. 10.資金管理・運用
  11. 11.新たな資金制度
  12. 12.経費の削減
  13. 13.おわりに

平成17年度 予算編成方針

1.はじめに

  昨年度、京都大学財務検討ワーキンググループにおいて検討され、平成15年12月2日に部局長会議で了承された「『法人化後の財務会計制度』について(中間報告)」(以下、「中間報告」という。)は、法人化後の京都大学における予算配分の当面の原則を確立するとともに、本学の中期計画・年度計画の実現に向けた教育研究活動の基本方針を財務会計制度の側面から明らかにした。

 平成16年度については、法人化初年度であることからこれを移行期として捉え、激変緩和に配慮した財政措置を講じることにより、教育・研究の実施に及ぼす影響を最小限に抑える配分方針を採用したところである。平成17年度には、運営費交付金の交付額に対して効率化係数という削減率が強制的に適用されること、附属病院に対して経営改善係数という増収ノルマが導入されること、授業料標準額の改定により運営費交付金が減額されること等により、財政運営は極めて厳しくなることが予想される。
 法人化により予算配分における国立大学法人の裁量は拡大されたが、その一方で、予算執行における法人の説明責任は強化された。自らの事業内容、費用、成果について説明責任が果たせない国立大学法人に対しては配分資金を削減していくことにより、国立大学の自主・自律を図るというのが、大学法人化の基本的な考え方になっている。
 以上のような経緯と考え方を踏まえ、確保した財源を、合理的な根拠に基づいて効果的かつ効率的に配分していくことが、本学においても一層強く求められる。
 他方、中間報告の検討時においては明らかにされていなかった効率化係数、経営改善係数、特別教育研究経費、成果進行基準による会計処理及び経営努力認定等の実態が明らかになった現在、中間報告に補足と修正を加え、平成16年度予算配分方針で示された基本方針と原則の見直しを行いながら、平成17年度予算編成方針を策定しなければならない。

2.平成17年度予算編成の基本的な考え方

(1)自己収入の確保の重要性
 中期計画期間中における運営費交付金が漸次削減されることが確実な状況の中で、教育研究をさらに活性化させるためには、自己収入の確保がこれまでに増して重要な課題となる。中間報告において提案されているように、平成17年度においても各予算配分単位に係る授業料、入学料、検定料、講習料、施設利用料、売払い収入等の収入目標額を設定することを通して、各部局においてそれらの達成を促進するための積極的な取り組みが求められる。
 なお、特定運営費交付金対象収入については、平成16年度予算額を基準として、中期計画期間中は同額に固定され、これを上回る収入があった場合でも特定運営費交付金額には影響を及ぼさないとされている。従って、部局固有の雑収入についても、収入増を図ることが重要であり、収入の種別毎に部局の努力に配慮した予算配分を実施するかどうか検討する必要がある。

(2)効率化係数の導入とその対応
 効率化係数の導入による影響は、自己収入の増加によってある程度相殺することが可能となるが、自己収入の正確な増加額を事前に見積もることは困難であるため、予算編成においては、効率化係数適用後の運営費交付金を基礎に配分せざるを得ない。
 実際には、効率化係数の対象となる経費を一律に圧縮することが基本となるが、法人化の趣旨に照らして、本学の戦略的視野に立った判断も必要となる。

(3)特別教育研究経費の導入
 平成17年度から概算要求における増額の枠組みとして、特別教育研究経費が導入された。この経費は、特定の事業(プロジェクト)に対して交付されるプロジェクト型経費に相当する。なお、これは時限が付された事業であることから、効率化係数の適用対象外経費とされるが、事業の進行状況によっては査定された経費の減額措置を受けることがあると考えられる。
 今後はこのような競争的経費の比重が増していくと予想されることから、全学において特別教育研究経費の取扱いを明らかにし、戦略的にこれを活用していく必要がある。
 特別教育研究経費の配分にあたっては、当該事業において見込まれる成果についても慎重に検討したうえで、共通的な経費を前もって確保すべきかどうかを検討していく必要がある。
 また、特定のプロジェクトには人件費と物件費が合わせて措置されるが、財務上は物件費的性格が強いと考えられる。本学においては、目下人件費と物件費を当面は区分して管理する方針であるが、本経費については、その管理方法について検討する必要がある。

(4)病院経営の改善
 附属病院は、医学研究科の教育研究の場であると同時に、診療行為の実施の場でもあり、さらに地域医療病院としての機能をも併せ持っている。附属病院は、こうした多面的な役割と機能を持ち合わせているために、病院経営の観点からは、その運営の難しさが克服課題として指摘されることが多い。
 附属病院の業務活動については、セグメント情報として開示され、評価を受けることから、診療収益や診療費用等の分析を病院経営の観点から系統的に実施し、その結果を反映させた病院運営となるよう、自助努力を行っていくことが重要となる。

3.教育研究事業等への配分

(1)人件費の配分
 平成16年度においては、人件費と物件費は区分して管理された。この措置は、性質の異なる両経費を区分経理し、その実態を明らかにすることにより効果的・効率的な予算執行が行えるとの考えに立ったものである。また、人件費の増加による物件費枠の圧迫を防止し、かつ雇用関係を適切に維持することが可能となるからである。
 常勤職員に係る経費は、役員報酬・教員給与・職員給与・超過勤務手当に区分され、休職者給与、非常勤職員(客員研究員・非常勤講師・非常勤研究員・研究支援推進員・研修医・学校医・非常勤医師・非常勤看護師・非常勤技師)、外国人教師、外国人研究員、退職手当については所要額により配分されている。
 17年度においてもこれと同様の方法で配分するものとする。
 なお、人件費の取扱いに係る下記の4点については、企画委員会の審議結果により財政的な検討が必要な事項とされたものについては、財務委員会で審議することとする。

  • 効率化係数により減額となる教員の人件費への対応策
  • 大学の発展に資する重点施策を実施するための教員の重点施策定員(仮称)の確保
  • 予算措置されなかった非常勤講師等に係る人件費の取扱い
  • 看護師暫定定数の取扱い

 また年度終了時において、人件費枠として管理する金額に剰余が生じた場合は、剰余金として繰り越し、次年度以降の給与改定財源等にするなど、その執行方法を明確にしておく必要がある。

(2)物件費の配分
 平成17年度においては効率化係数、特別教育研究経費、成果進行基準による会計処理、経営努力認定等、新たな要素が加わることや大学運営の個性化・重点化などの観点から配分することが本学にとって重要であることを踏まえ、財政上の激変緩和措置は基本的に廃止することとする。したがって、従来、学内配分していた経費については、決算書を基に費用対効果の査定を行い、費目によっては大幅に圧縮するなど、抜本的な見直しを図る必要がある。

①平成17年度から新たに必要となる経費
  • 消費税
     原則として、課税収入に係る消費税額から課税支出に係る消費税を控除した金額が納付額とされる。しかしながら、支払った消費税全額が課税収入に係る消費税額から控除できるわけではなく、以下のような処理が必要とされる。
    • 課税収入と非課税収入の合計額に占める非課税収入の割合に対応する部分の課税支出は、課税収入に係る消費税から控除することができない。
    • 運営費交付金、寄附金といった対価性のない収入により賄われる課税支出に係る消費税については、課税収入に係る消費税から控除することができない。
    すなわち課税支出に係る消費税のうち、税額控除できる金額は一部分に限られることから、運営費交付金からの消費税支出の発生が想定される。
  • 退職手当引当金等
      現在、常勤職員に係る退職手当については、運営費交付金で措置されることとなっているが、本学独自の人事制度を構築した場合、退職手当引当金等の設定について検討が必要となる。
②教育・研究環境を維持するために必要な経費
 大学における教育・研究環境を維持するために必要な経費として配分されるものである。
  • 義務的経費
     平成16年度における「法人化に伴い必要となる経費」のうち、平成17年度も必要となる経費については、義務的経費として組み入れる必要がある。なお、所要額については見直しを図る。
     また、電子計算機借料については、更新時において契約額を見直すなどして経費の節減方法を検討する。
  • その他の経費
     この経費は大学運営及び部局運営を行うための主たる費目であり、教育・研究を支えるための基盤的経費であるが、その内容の見直しを図るなど、効果的・効率的な経費の執行に努めるものとする。
③戦略的・重点的配分に必要な経費
 中期目標・中期計画に沿った取組を実施するために、戦略的・重点的に配分する経費であり、今後充実させる方策を検討する。
④特別教育研究経費
 概算要求に基づき措置されたプロジェクト型経費であり、基本的に事業を行う部局に配分することとする。なお、共通的な経費(光熱水料等)の負担等については、慎重に検討する必要がある。

4.戦略的・重点的配分に必要な経費のあり方

 中間報告では、「中期目標・中期計画における理念及び計画に反映させるため、戦略的・重点的に配分する経費」の必要性が示され、総長等のイニシアティブによって特定の教育研究事業への重点的配分を行うとしている。これは、法人化後においては、大学経営・運営の責任者である総長が判断し、予算配分する経費の充実を図る必要があり、総長のリーダーシップ発揮が求められていることを示している。こうした方向性を持った教育研究事業への配分として「総長裁量経費」がある。この経費は、京都大学として新たな教育研究領域への取組姿勢を示すため、総長の判断に基づき配分される経費であり、教育研究活動のさらなる個性化・活性化等に資するものでなければならない。また、早期に事業が着手できるよう年度当初から使用できる体制が望まれる。
 平成16年度における「総長裁量経費」のうち、「教育研究改革・改善プロジェクト等経費」については、下記の4区分で学内公募が実施され、総長の判断に基づいて経費配分が行われた。

 さらに、配分事項については部局長会議で報告されるなど,運用の透明性が確保されている。

  1.  (1)教育方法・内容・カリキュラム等の教育改善・改革・開発に係るプロジェクト
  2.  (2)研究科、学部、研究所等の将来構想に係るプロジェクト
  3.  (3)研究成果の予測が困難な革新的・基盤的研究計画
  4.  (4)電子媒体やフォーラム等による教育・研究成果の公開支援

 しかしながら、上記経費に対する申請における採択件数率は27%であり、部局申請件数の大半を補うことはできていない現状である。これは、従来から当該経費で措置してきた事項について、継続して手当てせざるを得ない経費の存在など、経費が硬直化しているためである。また、厳しい財政事情により、総長裁量経費枠が縮小されていることも一因になっている。総長裁量経費枠の増額を図るとともに、経年的に措置している経費の排除など対象事項の内容を見直し、総長のリーダーシップを十分に発揮できるものとすることが重要である。
 また、部局からの当該経費に係る申請においては、この趣旨を十分踏まえた経費を要求すべきである。
 さらに、例えば学生を支援するための経費、若手研究者の研究を奨励する経費等の確保も本学において重要であると考えられるので、その財源についても検討する必要がある。

5.予備費の確保

 収入予算(見込)に対する収入減、自然災害による被害や訴訟への対策等、予測できない事態に対応するために予備費を確保することは、大学の運営上必須である。
 またその性格上、緊急対応が求められる経費に充当される場合が多いことから、機動的に予算を執行し、事後報告等により透明性を確保するなどの運用が必要である。

6.全学共通経費のあり方

 平成16年度における全学共通経費は、法人化を機に「京都大学の基本理念」をより一層進展するため、全学的な観点から措置する経費として、次のカテゴリーから構成されている。

  1.  (1)教育研究環境整備
  2.  (2)施設・環境整備
  3.  (3)教育研究活動支援
  4.  (4)キャンパスライフ支援
  5.  (5)国際交流の推進
  6.  (6)社会貢献・連携推進
  7.  (7)大学図書館の活動支援
  8.  (8)病院の患者サービスの充実

 その財源は、新規受入寄附金の2%競争的研究資金の間接経費(30%相当額)の1/2の拠出を受けて、教育研究等への重点的な分配がなされてきた。特に部局からの緊急要求事項や図書館、学生関係、新領域関係運営費等への支援に配分されてきた。
 全学共通経費は、その使途について経費の性格に合致するものに厳選すべきである。すなわち、大学の管理運営や共同利用施設に係る経費、複数部局が共同で新たな事業を実施することに係る経費等、全学的な事業に必要な経費としての措置が想定され、部局独自の事業経費については、基本的に部局に配分された予算をもって賄うことが必要である。
 本経費の充実には、より一層の資金確保が必要となってくるが、拠出率の見直しや新たな他の経費の充当も視野に入れて検討する必要がある。

7.受託事業等経費

 運営費交付金が効率化係数により毎年減額されることから、国立大学法人の財政状況は、大変厳しい状況に直面せざるを得なくなる。このため、教育研究環境を充実させるためには、外部資金(競争的資金)の確保が重要になる。
 しかし、外部資金の獲得については分野別・部局別に実態が異なることから、戦略的に獲得できる体制を大学として整えるなど、方策を講じることが必要である。
 また、外部資金獲得への意欲向上を図るため、獲得部局のインセンティブを高める方策についても検討する必要がある。

8.施設費事業費

 国立大学等施設緊急整備5か年計画(平成13年4月策定)に基づき、施設の重点的・計画的整備が行われることから、使途を指定して交付される本経費については、原則として指定された使途のとおり配分する。
 なお、上記により予算措置がなされている現状に鑑み、大学の現状を踏まえつつ、次期科学技術基本計画の方向性を加味した戦略のもと、新規事業費の獲得による施設整備を行っていくことが必要である。

9.剰余金の翌事業年度への繰り越し

 平成17年度においては、特別教育研究経費に見られるような成果進行基準の導入による予算の弾力的な運用が可能な仕組み等を明文化し、経営努力認定の要件等を定めることが必要である。
 成果進行基準による経営努力認定の要件としては、次のことが考えられる。

  1.  (1)教育研究計画が明確であって、その達成すべき成果又は進捗度が客観的に計れること。
  2.  (2)成果又は進捗度に対応する予算の執行計画が作成され、収益化すべき額が明確にされていること。

10.資金管理・運用

 資金(運営費交付金、学生納付金、附属病院収入、その他の収入、寄附金、受託研究等、施設費、承継余剰金、競争的研究資金等)の管理は、本学の財政上の重要な業務のひとつであることを認識したうえで、安全・確実に管理し、精度の高い資金繰りを行わなければならない。資金運用には、金融機関等において元本保証を有する運用商品により効果的・効率的に運用を図り、利益(預金等の利息)の確保に努める必要がある。
 資金運用に際しては、牽制体制を確保して不正防止に努めると共に、社会からの疑念を生じないよう、透明性の確保に努めることが重要である。

11.新たな資金制度

 大学運営をより効果的・効率的に行うための取組として、大学の資金・資産活用や財源の獲得による新たな資金制度について検討すべきである。

  1. (1)学内向け貸付資金制度
     法人化に伴って財務会計制度は企業会計原則によるものとされ、複式簿記及び発生主義に基づく会計処理が導入されたが、他方では公会計的な予算決算制度も引き続き適用されている。そのために予算は現在もなお基本的には単年度主義に基づいて執行されている。単年度主義の会計制度は、諸規則に準拠した収入・支出の適正な執行管理には適しているが、効果的・効率的で機動的な財政運営には適していない。このため、各予算配分単位における資金の過不足を複数年度に亘って平準化するためのシステムとして、学内向けの貸付資金制度を導入することは、法人化の趣旨にもそった措置と考えられ、その実現に向けた取組を行うべきである。
  2. (2)学内協力積立金制度
     学内の複数部局が積立資金を拠出することにより、数年ごとに積立金の中からまとまった資金の配分を受け、部局における大型事業等の円滑な実施に充当できる制度を確立する必要がある。この積立金の目的については、学内施設の維持管理(営繕含む)のための積立や、大型設備等の導入・更新のための積立などが考えられる。
     なお、上記(1)の制度を併せて運用することを含めて、明確なルールのもとで確実に実行できるよう慎重に検討する必要がある。
  3. (3)教育研究運営資金制度
     新たなリソースを開拓・開発し、それらを活用することにより、大学全体のための教育研究運営基金の獲得に努力し、教育研究等の充実を図ることが必要である。

12.経費の削減

 使い切り予算の配分という視点を脱却し、経費削減に積極的に取り組む観点が一層重要になる。経費削減努力により、効率化係数相当額の緩和のみならず、努力次第では本学教育研究の質を向上させるための財源に充当することが可能となる。
 コストセンター方式による予算執行の中央管理のほか、部局横断的に節減可能な項目の洗い出し、経費削減を目的とした日常業務チェック体制の構築等を目指すべきである。
 具体的には、各部局における同一物品等の一括購入の促進(文房具等)、共同利用可能な物品等の重複購入の排除(ソフトウェアのライセンス契約等)等による経費削減が考えられる。

13.おわりに

 この平成17年度予算編成方針において検討課題とされたものについては、今後、財務委員会等において具体的対応を図ることとする。
 また、予算編成方針については、平成18年度以降も本方針を基本としつつ、必要に応じて毎年見直しを図っていくものとする。
 本学も含め、法人化後の国立大学は極めて厳しい財政環境に置かれているが、全学構成員の創意と工夫にもとづいた積極的な取り組みを進めていくなかで、法人化のメリットを最大限に引き出すことが可能となる。平成17年度予算の編成作業はその重要な第一歩として位置づけられるべきである。