松沢 哲郎霊長類研究所教授が紫綬褒章を受章(2004年11月3日)

松沢 哲郎霊長類研究所教授が紫綬褒章を受章(2004年11月3日)
松沢教授の写真

松沢 哲郎教授は,昭和49年京都大学文学部哲学科を卒業,同大学大学院文学研究科に進学,同51年12月に博士課程を中途退学して京都大学霊長類研究所助手,同62年助教授を経て、平成5年に新設された思考言語分野の初代教授に昇任し,現在に至っています。大学院理学研究科生物科学専攻の協力講座として霊長類学系思考言語分科を担当し,大学院生の教育,後進の研究者の育成に努力されています。平成7年度から文部科学省の特別推進研究の研究代表者として、チンパンジーを主とした霊長類の比較認知科学的研究を継続しています。また,平成15年度末に始まった、独立行政法人日本学術振興会の先端研究拠点事業の第1号として採択された「人間の進化の霊長類的起源(HOPE事業)」の日本側代表として、ドイツのマックスプランク進化人類学研究所と京都大学霊長類研究所の共同研究を推進しています。またこの間、日本赤ちゃん学会理事、日本動物心理学会理事、日本霊長類学会理事などを歴任し,日本の学術研究の発展にも大きく寄与してこられました。

松沢教授は、文字や数字などの視覚シンボルを利用し、コンピュータを介した実験場面で、ヒトとチンパンジーの認知機能や思考過程を同じ装置で同じ手続きで比較する研究方法を確立し、今日「比較認知科学」と称される、人間の心の進化的基盤を探る研究分野を開拓しました。主要な研究パートナーであるチンパンジーの名前を冠して「アイ・プロジェクト」と称されるようになった一連の研究は、昭和53年以来継続して四半世紀を超えています。昭和60年にネイチャー誌に掲載された論文で、チンパンジーがアラビア数字を使って数の概念を表現できることを初めて明らかにした。一方、西アフリカのボッソウ・ニンバの野生チンパンジーの調査から、道具使用にみる学習臨界期や文化の存在を明らかにしました。アフリカにおける野外研究と日本における実験的研究の双方を並行して進めるというユニークな研究手法で、知識や技術の習得とその世代間伝播を中心として、親子関係や教育の進化的基盤について研究を進めています。

これら一連の業績が高く評価され,平成3年には秩父宮記念学術賞、8年には中山賞特別賞ならびに第32回ノーベル・コンファレンス講演者、9年には日本心理学会研究奨励賞、平成13年にはジェーン・グドール賞、平成16年には中日文化賞と日本神経科科学会時実利彦記念賞など国内外の賞を受賞されています。これらに続いての今回の紫綬褒章受章は,まことに喜ばしいことです。

なお、関連の研究活動の詳細に関しては、下記の研究所ホームページを参照ください。
京都大学霊長類研究所(Primates research institute Kyoto University)(外部リンク)

霊長類研究所